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ペットテック -IoTが変えるペットとの暮らし-

増加するペットの飼育頭数と進化するペットテック

犬や猫といったペットは、全世界で8億頭以上が飼育されているといわれます。飼い主が一方的に愛情を注いで世話をするペットと異なり、人生の伴侶、家族の一員として人と共に暮らす動物を表すコンパニオンアニマル(伴侶動物)という言葉が広まりつつあり、ペットのあり方、ペットへの想いに変化の兆しが見られます。

また、新型コロナウイルス感染症の流行による巣ごもり傾向に伴い、自宅でペットと過ごす時間が増え、日本では犬・猫の新規飼育頭数がいずれも増加傾向にあります。同協会は、コロナ後に飼育を始めた人の心理面にポジティブな影響が表れたと紹介し、「ペットの存在は社会にとって、これまで以上に重要な存在になっていく」「飼い主にとってペットとは、家族と同等かそれ以上の喜びをもたらしてくれる重要な存在」とも指摘しています。

そうした社会の変化を踏まえ、最新技術を活用した「ペットテック(ペット×テクノロジー)」への関心も年々高まっています。今回は、人工知能(AI)やIoTを駆使し、ペットとの暮らしに快適さや安全性をもたらす最新技術を紹介します。

AIを駆使してペットの感情を言語化

心を通わせることはできても、言葉は通じないペットたち。ペットにとっての快適性を実現するため、その言葉を理解したいと願う飼い主は多くいるでしょう。そんな願いを叶える翻訳サービスが多数登場しています。

米国企業が提供するアプリは、猫の鳴き声を人の言葉にリアルタイム翻訳し、AIと機械学習により猫の気持ちを代弁します。また、日系企業の翻訳サービスでは、犬・猫の行動をメッセージに変換する独自のAIを活用し、離れた場所にいる飼い主にペットの状態を伝達。首輪にセンサ搭載の活動量計をつけ、収集したデータをAI分析することで、ペットが何をしているのか、どのような状態にあるのかをメッセージで伝えます。

ペット用フィットネスロボット

運動不足は、ペットにとっても肥満や認知症などのリスクを引き起こす恐れがあります。そこで開発されたのがペット用のフィットネスロボット。ロボットは感知センサで障害物を避けながら自動走行し、ペットが追いかけて遊びながら運動不足やストレスを解消することができます。

ペットの生体認証

犬の鼻のしわを生体認証に利用するアプリも登場しました。提供元の韓国企業によると、犬の鼻のしわは人の指紋のように1頭1頭異なるもの。このアプリを活用すれば、スマートフォンのカメラを通じて鼻のしわを登録することで飼い主情報と紐づけられ、身体的負担をかけずに個体識別が可能になるとしています。

一部の国ではすでに、犬の体内に埋め込んだマイクロチップで個体識別を行っており、日本でも2022年6月から、ブリーダーやペットショップで販売される犬や猫へのマイクロチップ装着が義務化されます。これにより、犬や猫が迷子になっても飼い主情報を特定しやすくなり、飼育放棄対策にもつながります。こうした流れは今後、生体認証や個体識別に関するテクノロジーの進化を後押しすると考えられます。

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アプリなどでペットの見守りや健康状態を把握できる時代が訪れている

IoTがつなげる家電とペットとの新たな関係

身の回りの電化製品においても、ペットを意識した機能を持つものが増えています。

例えば、ペットモードを備えたエアコンは、登録した情報からペットにとって最も快適な空調環境を実現します。ペットの種類や品種から最適な設定温度を算出し、犬なら涼しい場所を好む特性を踏まえてエアコンの下付近に冷風を吹き出し、猫なら冷やし過ぎないよう冷風と送風を自動切換しながら運転を行う仕組みです。また、見守りカメラと連携できるアプリでは、留守中のペットの様子を把握できることはもちろん、水飲みやごはん、トイレのエリアをあらかじめ設定しておくと、1日に何回そのエリアに行ったかをカウントし、健康管理に役立てることができます。

こうしたペットテック市場は拡大傾向にあり、2020年の5.5億ドル(約630億円)から2027年には20億ドル(約2,300億円)へ成長すると予測されています。同時に、言葉や差異を乗り越え、動物たちの気持ちを読み取って快適な生活環境を整えようと試みることは、人類にとっても新たな価値観を生み、さらなるテクノロジーのイノベーションにつながるかもしれません。動物をターゲットとした製品やソリューションの開発は、今後、より大きな意味を持つことになるでしょう。

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