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IIoT×エッジコンピューティング:クラウドの弱点をどう克服するか

産業分野で企業が注目するエッジコンピューティングとは?

製造業、物流、石油、ガス、輸送など、産業分野におけるIoT(モノのインターネット)を意味し、大容量かつ高度なデータ処理が必要となるIIoT(Industrial Internet of Things)。5Gの普及によってデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、工場などの隅々にまでネットワークが張り巡らされた結果、すべてのデータ処理をクラウドだけで担うことが難しくなってきています。そこで注目を集めているのが「エッジコンピューティング」です。

エッジコンピューティングとは、クラウドでの集中処理に加えて、データの発生源や活用する場に“近いところ(エッジ)”にもそれぞれ情報処理端末を設置し、その場ごとの情報処理を自律分散的に行う仕組みのことです。今回は、そのエッジコンピューティングの概要やメリット、市場動向を見てみましょう。

エッジコンピューティングが生まれた背景

そもそも、エッジコンピューティングという概念はクラウドの急速な普及を背景に生まれました。多様な情報処理でクラウドが利用されるうちに、処理の内容によっては通信環境に左右されやすい、クラウドのパフォーマンスでは不十分となるケースが顕著となってきました。その欠点を補うために、エッジ側で必要な情報を処理する仕組みが生まれたのです。また、IIoTの普及も深く関係しています。これまで、主にコンピュータが活用されてきたのはオフィス環境でしたが、工場をはじめさまざまな業務の現場でデータを自動で取得・活用できるようになり、より現場に近いところで情報活用のサイクルを回すニーズが生まれました。

エッジコンピューティングのメリットとは

クラウドの課題であり、エッジコンピューティングによって改善される主な要素として「リアルタイム性」「コスト」「データセキュリティ」が挙げられます。

エッジコンピューティングのメリット①:リアルタイム性

リアルタイム性に関して、クラウドではインフラ環境によっては通信遅延が発生し、製造現場のようなリアルタイム性・同期性が重視される場の情報処理では致命的となるケースがあります。そのため、通信を使うクラウドではなく、エッジで処理することに優位性が生まれます。

エッジコンピューティングのメリット②:コスト

コストに関して、クラウドですべての情報を収集・選別する方法は、無駄なデータの収集・蓄積に時間を費やすことになります。さらに、そうしたデータにも通信コストやストレージ費用などが発生します。一方、エッジ側でデータを選別・不要データ排除を行えば、時間ロスとコストを抑えることができます。

エッジコンピューティングのメリット③:データセキュリティ

データセキュリティに関して、IIoT活用によるスマート工場化が進む中、ネットワークのリスクは増大しています。また、特に製造業では機密データの情報漏えいを懸念している企業がほとんどです。このようなケースで、エッジ側にデータを適切に処理する機能を持たせたり、外に出してもよい形に変換した後にクラウドに集約したりする形をとることもできます。

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エッジコンピューティングは企業の業務の効率的な遂行に貢献

エッジコンピューティングの実現には、「データの加工・分析などを行う専用アプリケーション」「専用ハードウェア(比較的小型のデバイスや通常のサーバなど)」「多数の拠点に分散設置するアプリケーション・ハードウェアを統合管理する専用プラットフォーム」などが必要となります。

エッジコンピューティングはIIoT分野以外でも汎用性が高く、例えば、コロナ禍におけるIoTにも貢献しています。ヘルスケア分野では、同技術を活用した遠隔医療プログラム、患者データを使う診断システムなどにより、医療従事者が患者に迅速・効率的に対応することが可能になりました。また、急増した在宅でのリモートワークでも、エッジコンピューティング技術はエンドユーザーのネットワークパフォーマンスを向上させることにつながっています。

エッジコンピューティングの参入企業と市場規模

そうしたエッジコンピューティングの可能性をにらみ、内外の通信大手が続々と市場に参入しています。近年の話題としては、アメリカで2019年、世界的なコーヒーチェーン大手とIT大手が手を組んで、エッジコンピュータ製品を店舗のIoT対応コーヒーメーカーに搭載するという事例が注目を集めました。店舗では、エスプレッソをつくるたびに使う豆の種類、温度・水質など10以上のデータを収集。コーヒーメーカーの問題点を特定したり、コーヒーの新しいレシピをすべての対応機器に直接送ったりすることを可能にしています。

市場調査会社のグローバルインフォメーションによると、世界のエッジコンピューティングの市場規模は2020年の36億ドルから2025年には157億ドルに達し、年平均成長率は34.1%と予測されています。5Gの普及に伴うIoTの進化によって、データの流通量が爆発的に増加する中、さらにIIoTによるデータ量の増大に対応するために不可欠とされているエッジコンピューティング。今後、この技術が情報処理の核となることが期待されています。

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