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製造業DXをかたちにする、スマートファクトリー

変種変量生産に柔軟・迅速に対応する理想のセル生産方式ラインとは

18世紀半ばから始まった産業革命以来、製造業の王道は、少品種大量生産による高効率な生産でした。製造業企業の多くは、生産する製品の種類を絞り込み、工程を機械化・自動化することで、低コストで高品質な製品を市場に大量供給していました。

ところが近年、消費者市場の変化によって、製造業の競争条件が大きく変わりつつあります(図1)。市場のグローバル化や消費者ニーズの個別化、情報化時代の目まぐるしいトレンドの変化に対応するため、多種多様な製品を、頻繁に仕様変更しながら、必要に応じた量だけ生産・供給できる「変種変量生産」が求められています。

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図1 製造業企業には変種変量生産への対応が求められている

セル生産ラインは変種変量生産に向く、だが生産性向上が難しい

変種変量生産に対応するため、セル生産ラインを構築する製造業企業が増えています。セル生産ラインとは、1人または少人数の作業者チームで製品の生産工程を完結させる生産方式です(図2)。各セルで独立生産できるため、それぞれ別の製品を同時並行生産できます。

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図2 少品種大量生産向きのライン生産と変種変量生産向きのセル生産の違い

また、1人の作業者が受け持つ作業の範囲が広く、その裁量の下で生産する製品の品目や数量に合わせて作業調整できる点も変種変量生産向きです。生産品目を切り替える際に利用する部品・材料や治具を取り替える作業を、段取り替えと呼びます。セル生産ラインでは、生産ラインをほとんど止めず、段取り替えできます。

その一方で、セル生産ラインでは、製品の低コスト化や高品質化が困難です。人手作業が増えるからです。少品種大量生産で使われる特定作業に最適化した専用機は、同じ作業を繰り返すことしかできないため、セル生産ラインには適用できません(図3)。例えば、食品工場にはキャベツを千切りにする機械などがありますが、同じ機械で食材を炒めることも、肉を切ることもできません。融通が利かない分、作業の効率と精度が高かったわけです。

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図3 専用機、ロボット、人手作業の適性 出典:経済産業省「ロボット導入促進ガイドブック」

少品種大量生産された工業製品と同レベルのコストや品質で、セル生産ラインでの変種変量生産を実現するためには技術的なブレイクスルーが必要になります。ここがスマートファクトリーで挑むべきテーマになります。

人とスマートな機械が協調するダイナミックセル生産

こうした従来のセル生産ラインが抱える問題を、ロボットやIoT、人工知能(AI)など先進的テクノロジーを積極活用して解決する動きが活発になってきました。こうした新しい生産方式は、「ダイナミックセル生産」と呼ばれています。

現在では、産業用ロボットを導入する少品種大量生産向けラインは珍しくありません。特定作業しかできない専用機と異なり、産業用ロボットは、エンジニアが作業時の動きを教え込むことで様々な作業に対応できます。本来、変種変量生産の自動化に向く特徴を備えているわけです。ただし、産業用ロボットがセル生産ラインで使われることはほとんどありませんでした。人の近くで頑強な筐体が高速で動けば、事故につながる可能性があるからです。

ところが近年、「協働ロボット」と呼ばれる、人との共存を可能にした産業用ロボットが開発され、セル生産ラインなどで利用されつつあります。協働ロボットの登場で、人と機械がそれぞれの得意分野に注力して連携できるようになり、セル生産ラインの生産効率向上と高品質化が進みました。協働ロボットは、様々な安全機能が搭載されています。先進的なものには、自動運転車と同様の周辺環境を検知しながら人やモノに危害を与えず安全に仕事をこなす機能を持っています。その実現には、高度なセンサやAIが使われています。

経営・マーケティング・営業、そして工場のデータを連携

変種変量生産の狙いは、市場での需要の変動に応じて、求められる製品を必要な数だけタイムリーに生産・供給することです。こうした目的の実現に向けて、企業の基幹システム、工場の生産・品質管理システム、ラインの制御システムを連動させる仕組みの構築を目指す製造業企業が出てきました(図4)。

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図4 企業の基幹システムから、工場の生産・品質管理システム、ラインの制御システムまで一気通貫で連動・管理

製造業企業の生産計画は、企業の様々な要因を勘案して作られます。企業目標の達成状況を示すKPI(重要業績評価指標)や市場でのニーズの変化などマーケティング情報、製品の受注状況、さらには生産に必要な部品・材料の発注情報などが、その典型例です。これまでは、担当者が、過去に培った経験に基づいて生産計画を策定していました。これが今では、製造業企業の各部署が保有する多様な情報を統合し、AIで解析することで、これから市場で求められる製品の種類や量を正確に予想できるようになりました。

企業内情報を管理する基幹システム(ERP)を、工場での生産スケジュールや作業管理を行う生産システムと連動させて、市場の変化に迅速かつ円滑に対応する体制を構築できます。このような製造業企業の新たな情報システムは、災害や感染症による需給バランスの急激な変動やサプライチェーンの寸断への適切な対処など、レジリエントな事業体制の構築にも効果を発揮します。

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