コンデンサ(キャパシタ)
製品技術紹介
自動車用OBCやワイヤレス給電、サーバなどの共振回路向けに最適な中高圧低損失積層セラミックコンデンサ(MLCC)を紹介します。近年増加している大電力を扱うLC、LLC共振回路で利用する際の特性や選定ポイントについて詳しく解説します。
近年、共振回路を利用するシーンが増加しています。
EV・PHV(電気自動車・プラグインハイブリッド車)などの自動車用OBCやサーバ用電源、大型設備向け電源など、高効率化が求められる100W以上の大型電源ではLLC共振回路が広く採用されています。その採用率は、9割以上と想定しています。また、ワイヤレス給電(Wireless Power Transfer、WPT)ではLC共振回路を使用して大電力の送受信が行われています。WPT搭載製品はスマートフォンやタブレットなど小型機器だけでなく、自動車、製造工程用搬送ロボット、など大型製品にも広まっています。
このようにLC共振回路、LLC共振回路など様々な方式の共振回路が普及する一方で、大電力を扱う共振コンデンサ(共振回路に使用するコンデンサ)は10nF以上という大きく安定した静電容量と低損失性能が求められています。従来の選択肢はフィルムコンデンサのみでしたが、現在ではより多様なメリットをもつ積層セラミックコンデンサが主流となっています。特に、高電力密度を要求される共振回路には積層セラミックコンデンサが選ばれています。
本技術記事では、共振コンデンサに積層セラミックコンデンサを利用するメリットを説明すると共に、その特性とご活用いただくためのポイントや選定時の注意点、おすすめラインアップをご紹介します。
例えば、自動車用WPTのような大電流を扱う製品に使われる共振回路では、コンデンサに印加される電圧V(p-p)は数100V(p-p)から10000V(p-p)と高くなっています。10000V(p-p)に達するケースも見られます。積層セラミックコンデンサの定格電圧は630Vdc、1000Vdcであるため、使用電圧が高い場合はこのV(p-p)が定格電圧以内に収まるようにコンデンサを直列に接続して使用する必要があります。コンデンサは直列に接続すると合成容量が減少するため、並列接続によって必要容量を確保する必要があります。
結果的に共振コンデンサが多直列・多並列接続で使用されているケースが多くなっており、より小さい実装面積の製品が求められます。
自動車市場の例では、自動車用WPTにおける共振周波数は国際規格上85kHzで固定されていますが、EV・PHV用OBCにおける共振周波数はメーカーによって60kHz~400kHzと幅があります。これらの用途で使われる共振回路においては、高周波の高電圧がコンデンサに印加されることになり自己発熱しやすくなります。
従って共振コンデンサにはより低損失であること、長期使用における自己発熱上昇が抑制されることが求められます。
積層セラミックコンデンサの特徴
・実装面積(体積)が小さい
・低発熱(低ESR)である
・ESLが低い
・長期信頼性に優れている
・最高使用温度が高い
積層セラミックコンデンサはフィルムコンデンサと比べて、最高使用温度が高く低発熱であることから長期信頼性に優れる特徴があります。また、同じ静電容量の製品において体積が小さく、ESLが低い点も特徴として挙げられます。これらの特徴から、積層セラミックコンデンサは大電力対応の共振回路で共振コンデンサに広く利用されています。
前述の通り、自動車用WPTやEV・PHV用OBCのような大電力を扱う共振回路には低損失かつ自己発熱しにくい共振コンデンサが求められます。ムラタは、こうした共振コンデンサの需要にお応えする定格電圧が630Vdc、1000Vdcで低損失材料を使用した中高圧積層セラミックコンデンサをラインアップしています。
チップ積層セラミックコンデンサ | 金属端子タイプ積層セラミックコンデンサ | |
|---|---|---|
外観 |
|
|
使用温度範囲 | −55~+125°C | −55~+125°C |
定格電圧(DC) | 630V | 630V |
温度範囲 | C0G(EIA):0±30ppm/°C | C0G(EIA):0±30ppm/°C |
容量範囲 | 5.6~10nF(3216Mサイズ) | 15~54nF |
製品形態としては一般的なチップタイプとチップタイプに金属端子を付けた2種類があります(表1参照)。
金属端子タイプは金属端子を付けることにより大型サイズチップ(5750Mサイズ)の2段積みが可能となり、実装面積が削減できるだけでなく、自動車市場で懸念される「はんだクラック」のリスクを減らす効果もあります。
共振回路を内蔵する自動車用OBCやサーバ用電源、大型設備向け電源をはじめとする大型製品は、使用期間が長いためコンデンサにも長期信頼性が要求されます。これらの積層セラミックコンデンサの場合、連続使用前提で10年を目標寿命としています。
上記でご紹介した製品を含め、共振回路でお使いいただくコンデンサ(共振コンデンサ)は選定における注意点があります。大電力用途において共振コンデンサの選択を誤ると搭載機器の発煙・発火事故につながります。これは、低発熱・長期信頼性のメリットをもつ積層セラミックコンデンサにおいても同じで、その特性を十分に考慮した上で選択する必要があります。
当社が特に重要と考える項目である「コンデンサの自己発熱」と「許容電圧曲線」について説明します。
大電力用途で使用される共振コンデンサは、電圧印加直後の初期発熱の後、自己発熱の上昇が見られます。積層セラミックコンデンサにおいても自己発熱の上昇は不可避ですが、目標寿命(例えば10年)内で最高使用温度125°Cを超えるような電圧・周波数条件は避けるべきです(図1参照)。
ムラタの積層セラミックコンデンサは、コンデンサの表面温度が最高使用温度125°Cに達するまでの時間が目標寿命となる電圧を許容電圧Vdcとしています。選択の際は、使用電圧V(p-p)が許容電圧内である必要があります。
当社はアイテム毎に、周波数に応じた許容電圧を示す「許容電圧曲線」(図2参照)を設定し、製品仕様書や当社ウェブサイト内のスペックシートに記載しています。
許容電圧と周波数との関係について当社の考え方です。図2に示す「許容電圧曲線」は、アイテム毎に設定される許容電圧グラフを一般化したものですが、周波数帯によって3つの領域に分類できます。
周波数が数10kHz以下と低い故にコンデンサの自己発熱は小さく、定格電圧が許容電圧となります。但し、共振コンデンサとして中高圧低損失積層セラミックコンデンサがこのような低周波領域で使用されるケースは少ないです。
電圧印加直後の自己発熱は⊿T20度*1以内ですが、数10k~数100kHzに及ぶ高電圧印加により自己発熱の上昇が見られるエリアです。この領域においては、コンデンサの表面温度が最高使用温度125°Cに達するまでの時間が目標寿命(今回ご紹介した製品の場合、目標寿命を10年としています)となる電圧を許容電圧としています。共振コンデンサとして中高圧低損失積層セラミックコンデンサが使用されるケースの大半がこの領域に属します。
*1 当社では低損失、高誘電率チップコンデンサに関わらず、使用可能条件をコンデンサの自己発熱が⊿T20度以内であること、としています。
周波数を更に高くすると、電圧印加直後のコンデンサの自己発熱が⊿T20度を超えるようになります。前述の通り当社では低損失系、高誘電率系チップコンデンサに関わらず使用可能条件をコンデンサの自己発熱が⊿T20度以内としています。中高圧低損失積層セラミックコンデンサにおいても自己発熱が⊿T20度となる電圧が許容電圧となりますので、この温度以下になるように製品を選定いただく必要があります。
これまでご説明した通り、共振コンデンサは様々な特性を考慮する必要があるため部品選定の難易度が高くなります。これは、急速に普及する自動車用OBCやサーバ用電源、大型設備向け電源にとってなどの技術進展を難しくする要因とも言えます。特に、以下の2点が挙げられます。
ムラタはこの課題をサポートすべく、お客様の使用環境に最適な共振コンデンサの選定をサポートするツール“SimSurfing”を開発しウェブ掲載しております。共振コンデンサの使用電圧、使用温度、必要容量を入力するだけで、最適な製品と直並列数が表示されます。このツールによって、お客様の品番選択及び設計における負荷を軽減します。
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