ノイズ対策技術 / 事例紹介(民生)
センサ誤作動改善のためのノイズ対策(2)
こんなお困りごとありませんか?
ノイズによるセンサ誤作動のメカニズムについてご紹介いたします。
ノイズによるセンサ誤作動のメカニズム
ワンチップセンサは主に、信号 / 電源 / GND の3種類のラインから構成されます。また、信号ラインはClockとDataなど複数本を用いて通信を行います。それぞれのラインにノイズを印加した場合の影響について考えます。
デジタル信号ラインへのノイズ印加
デジタル信号ラインにノイズが印加された際、ノイズによってハイ / ローの閾値を超え誤った判定がなされた場合に、通信が正常にできない誤作動が発生すると考えられます。
実際に、ある加速度センサのデジタル信号ラインにノイズを注入する評価を行うと、通信がストップする誤作動を確認しました。
電源ラインへのノイズ印加
アナログフロントエンドには増幅回路やA/D変換回路が含まれ、これら回路の電源が変動し正常に動作しなかった場合に、異常な値を出力する誤作動が発生すると考えられます。
実際に、加速度センサの電源ラインにノイズを注入する評価を行うと、出力が乱れる誤作動を確認しました。
以上のように、ワンチップセンサの信号ラインもしくは電源ラインにノイズが印加された場合、通信ストップや出力値が乱れる誤作動が発生します。
センサのノイズ対策のポイント
はじめに
センサのノイズ対策としてフィルタに求められる条件は下記です。
- 動作に必要な電源や信号を通過させる
- 誤作動の原因となるノイズを遮断すること
ワンチップタイプのセンサには、様々な種類 / 品名 がありますが、誤作動の原因となるノイズ対策に必要なフィルタには大きな差がないと考えられます。
これは ”フィルタに求められる2つの条件“ が、いずれのセンサでも共通であるためです。
- 動作に必要な電源や信号を通過させる
→ワンチップタイプのセンサはインターフェース(ICピン)が統一化されている - 誤動作の原因となる印加ノイズを遮断する
→印加するノイズのスペックはイミュニティ試験として規格化されている
フィルタの実装位置
フィルタを実装する位置はセンサの近傍が効果的です。
電源ラインのノイズ対策
電源ラインノイズ対策には低周波から高周波まで広帯域で挿入損失が大きいフィルタが適しています。
コンデンサのみで対策する場合、低周波側をカバーする大容量のコンデンサと高周波の挿入損失を得るための低ESLコンデンサが必要です。
コンデンサとインダクタを組み合わせると、挿入損失が顕著に大きくなるメリットが得られます。インダクタよりもセンサ側に十分な容量を配置した上で、多段に構成することでより効果的なノイズ対策フィルタになります。
信号ラインのノイズ対策
信号ライン(データ/クロック)のノイズ対策には、通過させるべき信号周波数では挿入損失が小さくいフィルタの設計が必要です。
ノイズレベルが小さい場合や信号とノイズの周波数が離れている場合はコンデンサのみで対策可能ですが、
特に信号周波数とノイズ周波数が近い場合、インダクタとコンデンサを組み合わせて急峻な挿入損失特性のフィルタを構成することが必要になります。
インダクタ使用時のポイント
インダクタを特定ラインのみに挿入すると、線路がアンバランスとなりノーマルモードへの変換(電位差)が生じるため、誤動作がかえって悪化する可能性があります。インダクタの挿入時には、全ラインに同一品番を使用することが重要です。
※インダクタ型フィルタであるフェライトビーズは、高インピーダンスでノイズを阻止するだけでなく、フェライトによる損失としてノイズエネルギーを吸収するので、より高いノイズ対策効果が期待できます。
次のページでは「ノイズ対策事例」として、
「車載機器向けの伝導イミュニティ規格であるBCI試験」を想定しご紹介いたします