ノイズ対策ガイド

技術者によるノイズ対策手法のご紹介 -ワイヤレス給電のノイズ対策ソリューション(後編)-

前編ではワイヤレス給電のノイズ問題、メカニズムに関してお話をしました。
後編では具体的なノイズ対策の手法についてお話したいと思います。

Q.ワイヤレス充電器ではどのようなノイズ対策が効果的でしたか?

A. ノイズ対策の基本は、ノイズ源で発生したノイズが放射しやすいアンテナに到達する前にノイズを抑制することです。

例に漏れず、ワイヤレス充電器でも、電源ケーブルの根元にコモンモードチョークコイル(CMCC)を挿入することで放射エミッション低減に効果があり、送電コイルの手前に低ESLコンデンサとコモンモードチョークコイルを挿入することで受信感度の改善に効果がありました。

図4 ワイヤレス充電器のノイズ対策

具体的な改善効果を図5、図6に示します。

電源ケーブルの根元にコモンモードチョークコイルを挿入することで、放射エミッションは大きいところで約20dB低減され、CISPR22の規制をクリヤーしています。

また、送電コイルの手前に低ESLコンデンサとコモンモードチョークコイルを挿入することで、受信感度は最大約13dB改善され、充電していないときとほぼ同等レベルとなりました。

図5 放射エミッションの改善効果
図6 受信感度の改善効果

Q. どんな部品が使われているのですか?

A. 電源ケーブル根元のコモンモードチョークコイルには、 DLW5BTM102SQ2/TQ2・142 SQ2/TQ2を使用します。

放射エミッションが問題になる数十MHzでのノイズ除去性能に優れており、定格電流も1.5~2Aと十分に高いので、ここで使うノイズ対策部品として最適な製品です。送電コイル手前のコモンモードチョークコイルには、DLW5BTM101SQ2/TQ2・251SQ2/TQ2を使用します。受信感度が問題になる200~1000MHzの幅広い周波数帯におけるノイズ除去性能に優れており、定格電流も5~6Aと十分に高い製品です。

また、100kHzにおけるノーマルモードインピーダンスほぼゼロであり、ワイヤレス給電の挙動にも影響を与えません。

送電コイル手前の低ESLコンデンサには、LLL185R71H222を使用します。コモンモードチョークコイルと同じく200~1000MHzの幅広い周波数帯でノイズ除去性能に優れており、定格電圧も50Vと十分高い製品です。また容量も2200pFと非常に小さく、ワイヤレス給電の挙動に影響を与えません。

*DLW5BTシリーズ

*LLLシリーズ

さらに詳しい情報を知りたい方はこちら(ノイズ対策部品/EMI除去フィルタ)、(セラミックコンデンサ)をご参照ください。

-おまけ-

Q. 今後この市場はどのようになっていくと思われますか?

A. 現在はスマートフォンなど5W以下の製品がメイン市場ですが、今後は大電力化が進みます。2015年にはタブレットなど15Wの市場でも導入が始まる予定です。
その後はPCや家電にも展開され、家の中から電源コードが消える日が来るかもしれません。

また、自動車の分野でもワイヤレス給電の開発が進められており、数年後には実用化が期待されています。さらに、遠い未来には、全ての道路やガードレールにワイヤレス充電器が埋め込まれ、ガソリンやバッテリーの残量を気にせず走り続けることができる、と言う夢のような計画もあります。

また、医療の分野でも注目されており、ペースメーカーなど体内に埋め込む機器への適用も期待されています。現在のペースメーカーは電池の交換のため定期的に手術をする必要がありますが、ワイヤレス給電が適用されると体内のペースメーカーにも給電できるため手術が不要になります。

このように、ワイヤレス給電は今後さまざまな分野に展開され、我々の生活スタイルを変えていく可能性があります。

 

担当 : 株式会社村田製作所 EMI事業部商品開発部

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