ノイズ対策ガイド

実装面積を削減するにはどうすればいいの?-低ESLコンデンサの活用方法-

1.はじめに

近年、スマートフォンなどに代表される小型モバイル機器は、電話機能に、デジタルカメラ、ゲーム、ホームページ閲覧、音楽再生などの多くの機能が追加され、今後増々いろいろな機能が搭載されることが予想されます。またLTEなどの高速データ通信機能が今後普及し、動画などの大容量データのやりとりも増えることが予想されます。

(図1を参照ください)

CPUの高速化とLTE通信の採用で、消費電力が大きくなり、バッテリの容量アップのため、電子部品が搭載されるメイン基板の大きさは小さくなる傾向です。
また、高機能化に伴い基板に搭載される電子部品の数は増加する傾向にあります。

特に大容量のデータを処理するアプリケーションプロセッサと呼ばれるICの電源には、1つのICあたり数十個のMLCC(Multi-Layer Ceramic Capacitor)が使われることがあります。
上記の背景とスマートフォンの技術トレンドから、ICの電源に使われるMLCCには以下が求められています。

  • 小型で大容量 
  • 低インピーダンス
図1 スマートフォンの将来

2.低ESLコンデンサによる実装面積削減とは

この電源用MLCCとして最新の小型大容量の低ESLコンデンサを最適に使用すれば、図2のようにMLCCの員数を1/2以下に減らせますし、MLCCで占める実装面積を大幅に削減できます。

図2 低ESLコンデンサによる実装面積削減

3.低ESLコンデンサの種類と特長

図3はIC/LSIの電源ラインとそこに使われているMLCCの接続を示しています。
IC/LSIのスイッチングスピードの高速化によりIC/LSI自体がノイズ源となる傾向が高くなってきています。

その高周波ノイズ対策や電源電圧変動を抑制するために、図3に示すように数多くのMLCCがバイパスコンデンサとして使用されています。
図3の中で、IC/LSIのHOT端子からMLCCを通り、IC/LSIのGND端子に戻ってくる電流のループが作るインピーダンスをループインピーダンスと呼ぶことにします。IC/LSIのHOT-GND間に発生する電源電圧の変動は、このループインピーダンスの大きさに依存します。従って、電源電圧の変動を抑えるには、ループインピーダンスを低く抑える必要性が高まっています。

MLCCの持つインピーダンスは、このループインピーダンスの一部を形成します。

ループインピーダンスを低く抑えるためには、通常は多数のMLCCを並列に接続し、並列効果によってトータルのインピーダンスを小さくします。ここで使われるMLCCですが、その構造と等価回路は図3の右下のようになっており、コンデンサと言いながらもわずかながら、等価直列抵抗:ESR、等価直列インダクタンス:ESLを持っており、この中のESLが高周波のループインピーダンスを増大させる要因となっています。

今回ご紹介させて頂く低ESLコンデンサとは後述のように、ESLが小さくなるように作られたMLCCの一種です。この低ESLコンデンサをバイパスコンデンサとしてご使用頂くことで、ループインピーダンスを低減させることができます。また、MLCCを低ESLコンデンサに置換えて頂くことで並列に使う数を減らせますので、大幅な員数削減、実装面積の削減ができます。

図3 IC/LSIの電源ラインとMLCCの接続

次に低ESLコンデンサの構造と特長について説明致します。低ESLコンデンサにはLW逆転コンデンサと3端子コンデンサの2種類があります。
LW逆転コンデンサの構造を図4の中段に示します。通常タイプのコンデンサのL長手、W幅方向が逆となり、長手方向に外部電極を有しています。
一般にMLCCのESLは電流が流れる距離が長さに応じて増え、幅が広がると小さくなる傾向があるため、LW逆転コンデンサは電流が流れる距離を短く、幅を広くすることで低ESLを実現している構造となっています。

続いて3端子コンデンサの構造について説明致します(図4最下段)。3端子コンデンサの内部電極構造はHOTスルー電極とGNDスルー電極を互い違いに重ね合わせている構造となっています。これによりバイパス方向に電流が流れるときは、電流の流れる長さが短く、幅が広くなっていることから、低ESLとなっています。また、3端子コンデンサは電流の流れるルートが4本形成され、この並列効果で更に低ESLを実現していることになります。更に電流はGND方向へ、画面の上下方向に流れます。この電流により発生する相互インダクタンスによって低ESLを実現しています。

図4 低ESLコンデンサの種類と特長

図5のグラフは通常のMLCCと、低ESLコンデンサであるLW逆転コンデンサと3端子コンデンサのインピーダンス周波数特性の比較を示しています。どのタイプも同じ容量の1uFなので、自己共振点以下の周波数帯域ではほぼ同等の特性を示していますが、自己共振点以上の周波数帯域ではESLの違いによりインピーダンスが大きく異なってきています。

図5に示すように、LW逆転コンデンサですと通常のMLCCの1/3のESL、3端子コンデンサですと通常のMLCCの1/10程のESLとなっています。ただしご注意頂きたいのですが、これはコンデンサ単品での性能比較であり、実際には基板に実装して使用されますので、ループインピーダンスにはコンデンサのESL以外に基板やビアのインダクタンス成分が加わります。

図5 品種によるインピーダンス周波数特性

4.員数削減の方法

図6は、最新の小型大容量の低ESLコンデンサとMLCCのインピーダンス周波数特性の比較をしたものです。LW逆転コンデンサ(1.0×0.6mmサイズ、4.3uF)の高周波でのインピーダンスは、MLCC(0.6×0.3mm、1uF) 2個分と同等のインピーダンスになることから、MLCC 2個をLW逆転コンデンサ1個で置き換えることができます。

3端子コンデンサ(1.0×0.5mmサイズ、4.3uF)の高周波でのインピーダンスは、MLCC 4個分以上のインピーダンスになることから、理論的には
MLCC 4個以上を3端子コンデンサ1個で置き換えることができることになります。

図6 員数削減の方法

図7で、3端子コンデンサを使用することによるMLCC削減の原理について説明いたします。
ここでは便宜上、ビアと配線およびコンデンサによる単純な構成を考えます。

①はバイパスコンデンサに、MLCCを用いた場合の例です。このときのループインピーダンスは、ビアと配線およびMLCCのインダクタンス成分によるインピーダンスの合計値となります。
②はMLCC(1個)から3端子コンデンサ(1個)に置換えた場合を示しています。3端子コンデンサは、MLCCに比べてESLが低いので、ループインピーダンスの合計値が低減します。したがって、ループインピーダンスに起因する、電圧変動の抑制が期待できます。

図7 ループインピーダンスの比較

図8では、3端子コンデンサのもう一つの使い方を示しています。
今仮に、バイパスコンデンサを3端子コンデンサに置換える際、MLCCと同等のループインピーダンス(電圧変動レベルが同等)で良いとすれば、コンデンサのインピーダンスの差分だけ、配線を長く設計できます。この配線の長さを利用すると、複数の電源端子を1つの3端子コンデンサでカバーすることができるようになります。すると図8のように、3端子コンデンサによって、いくつかのバイパスコンデンサを集約して員数を減らすことができます。このとき配線長が長くなるので、配線部のインダクタンスは増えるのですが、コンデンサのインダクタンスが小さくなっていますので、トータルのインピーダンスは変わりません。

ただし、配線の幅が細い場合や長い場合には、コンデンサのESL成分を上回ると効果がありません。したがって、配線のインダクタンス成分を低減するために、配線幅を太くすることや、バイパスコンデンサ実装面において、電源ビアを接続し、並列効果を高めることをお勧めします。 

図8 3端子コンデンサを使用することによるMLCC削減のイメージ

5.コンデンサの員数削減例

現在、一部のスマートフォン向けのアプリケーションICのリファレンスデザインには、0603サイズ、1uFのMLCC が100個以上、電源用のバイパスコデンサとして記載されています。
このうち、いくつかのコア電源ラインに10個以上のバイパスコンデンサが並列に使われています。また他のたくさんの電源ラインにも2,3個のコンデンサを並列に使うことが推奨されています。

これらのコンデンサを、MLCCから低ESLコンデンサに変更し、員数を減らした例を図9に示します。図9のように低ESLコンデンサを使用することで、同等のループインイーダンスを維持しながら、元のデザインからMLCCの員数を100個から32個へ変更可能なことが判りました。すなわち、合計で68個のMLCCを削減可能です。また、低ESLコンデンサに変更することで、アプリケーションICとその周辺のコンデンサで占める面積を約35m㎡減らすことが可能です。

図9 員数削減と実装面積削減

6.まとめ

最新の小型大容量の低ESLコンデンサを最適に使用すれば、ICの電源に使われているMLCCの員数を1/2以下に減らせますし、MLCCで占める実装面積を大幅に削減できます。今後も小型大容量の低ESLコンデンサを商品化し、員数削減、実装面積削減に貢献していきます。

 

執筆 : 株式会社福井村田製作所 第2コンデンサ商品開発部 加藤 一喜

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