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LoRaWAN(ノンセルラーLPWA)入門 - 基礎からIoT活用事例まで(2)

LoRaWAN(ノンセルラーLPWA)入門 - 基礎からIoT活用事例まで(1)では、LoRaWANの概要や仕組みなどの基礎知識からネットワーク構築の例までを紹介してきました。 
以下では、LoRaWANネットワークを実際にIoTソリューションに活用した事例や、エンドデバイスのサイズ、性能、使いやすさ、信頼性を左右する、LoRaWANノンセルラーLPWAモジュールを紹介します。

4. LoRaWANを活用したIoTソリューションの事例 

LoRaWANを用いたLPWA無線通信は、さまざまなIoTソリューションに適した無線通信ネットワークとして幅広い用途に利用されています。ここでは当社のLoRaWANモジュール(Type ABZ)を活用したアプリケーションの成功事例の一部を紹介します。

4.1 LoRaWANと環境監視センサを使った防災システム

河川がある街や居住区のイメージ
河川がある街や居住区のイメージ

大雨による洪水災害に備え、LoRaWANを搭載し、堅牢性に優れた環境監視センサを河川の周囲に設置。複数のLoRaWANデバイスで河川の各地での雨量を測定して長距離無線通信でデータを収集し、端末画面上の地図に状況を表示するアプリケーションです。スマートフォンなどから大雨の状況をリアルタイムで確認することができ、大雨や洪水による被害防止に役立てることができます。
同時に、LoRaWANモジュールは消費電力が低く電池寿命が長いため、屋外に多数のセンサを配置していてもデバイスの電池交換などのメンテナンスにかかる手間とコストを最小限に抑えることができます。

4.2 LoRaWANと土壌センサを使ったスマート農業

ムラタの土壌センサ
ムラタの土壌センサ

近年、土壌センサや無線通信を活用したスマート農業への需要が高まっています。広範囲または遠隔の土壌の状態をセンシングするにはワイヤレスでの運用が高効率です。そこで、低消費電力で電池交換頻度を大幅に低減し、長距離無線通信が可能なLPWAの導入が注目されるようになりました。  
農業敷地内で中央管理する場合や、山間部など都市部や集落から離れた農地で使用する場合は、キャリア事業者との契約、およびキャリア事業者の基地局がカバーするエリアを考慮せずに使用できる、ノンセルラーLPWAのLoRaWANが有効です。  
なお、当社の土壌センサ(EC[電気伝導度]、Moisture[体積水分率]、Temperature[温度]を土壌中または水中で同時に計測可能)およびLoRaWANモジュールは、小型かつ厳しい環境にも耐えうるため、屋外でも安定して使用できるアプリケーションが実現します。

当社の土壌センサに関する詳細は下記のリンクからご覧ください。  
土壌センサ|村田製作所(murata.com)

4.3 LoRaWANを使った生活インフラのスマートメーター

スマートメーターのイメージ
スマートメーターのイメージ

従来、水道・電気・ガスといった生活インフラは検針員が現地に足を運んで確認する必要がありました。近年は、LoRaWANモジュールをエリア内に多数設置されたメーターに搭載して、利用データを収集することにより、検針の手間とコストを削減することに成功した事例が増加しています。
また、長期にわたる過剰利用または停止などを検出してアラートを出したり、供給遮断・再開を遠隔制御したりといったことも可能です。さらに、LoRaWANはノンセルラーLPWAであるため、キャリア事業者のサービス提供エリアに縛られることなく導入・運用することができます。

4.4 LoRaWANを使った太陽光発電施設のスマート化

太陽光発電施設のイメージ
太陽光発電施設のイメージ

LoRaWANは再生可能エネルギーの分野にも利用することができます。広い敷地に置かれた太陽光発電用パネルは、それぞれが電送用のケーブルなどで接続されているため、IoT化に欠かせないデータ通信にも長い有線ケーブルを用いるとシステムが煩雑化し、点検すべきポイントも増加します。LoRaWANの低消費電力・長距離通信を活用し、センシングやパネルの制御のデータ通信をワイヤレス化することにより、シンプルかつ合理的、そして低コストでの運用が可能です。また、LoRaWAN モジュールは低消費電力であることから電池寿命が長いため、電池交換などのメンテナンス頻度を飛躍的に軽減します。

5. 村田製作所のLoRaWANモジュール

村田製作所では、小型かつ高品位なノンセルラーLPWA(LoRaWAN)およびセルラーLPWA(LTE-M/NB-IoT)モジュールを製造しています。ここでは、当社のLoRaWANモジュールの特長やラインアップを紹介します。

5.1 村田製作所のLoRaWANモジュールの特長

村田製作所が世界各地の多種多様な分野・用途に提供しているLoRaWANモジュールには、以下のような特長があります。

  • 小型かつ外部ホスト不要  
    当社のLoRaWANモジュールは小型でありながらアプリケーションプロセッサを搭載しているため、外部ホストを必要としません。   
    また本モジュールはオープンMCUタイプとATコマンドモデムタイプの2種類があります。
  • 低消費電力  
    モジュールの消費電力が低く電池が10年程度もつため、電池交換にかかる手間とコストを大幅に削減します。
  • オープンMCUタイプ  
    MCU(Memory Control Unit)としてCortex M0+/M4アプリケーションプロセッサを搭載。利用者はMCUホスト不要で直接モジュールにLoRaWANスタックやアプリケーション、デバイスの一意の識別子(MACアドレスなど)を追加でき、スタンドアローンのエンドノードとして利用することができます。
  • ATコマンドモデムタイプ  
    指定した日時に指定したコマンドを自動的に実行するATコマンドでLoRaWANスタックを容易に制御することができます。
  • 主要国の電波法認証取得済み  
    当社モジュールはECマークなど各種規制認証を取得済みであるため、モジュールを搭載したエンドデバイスを製品化する際の規制認証を容易化できます。
  • シンプルなPCB設計  
    PCBの設計をシンプルにすることで、モジュールの製造コストおよび価格を低減しています。
  • アンテナ性能に配慮した設計  
    モジュールのPCB試作前にアンテナの評価を行っているため、アンテナを高い性能で利用することができます。
  • ワールドワイドな販路  
    当社のLoRaWANモジュールは世界のさまざまな販売経路から入手可能で、任意の数量を手に入れることができます。
  • 品質と耐久性  
    当社のLoRaWANモジュールは、機械的試験および信頼性試験が実施されており、厳しい環境にも耐えることができます。
  • 競争力の高いモジュール  
    開発や生産など、全体のコストを削減。当社モジュールを使うことで、負荷なく迅速に製品を市場投入することが可能です。

5.2 LoRaWANモジュールのラインアップ

村田製作所では、数あるノンセルラーLPAWAの規格のなかでも通信速度や通信距離のバランスに優れた仕様であることから幅広く支持されている、LoRaWANに対応したLPWAモジュールをラインアップしています。

・ノンセルラーLPWAモジュール Type ABZ(CMWX1ZZABZ)

 

免許不要の規格であるLoRaWAN™に対応したノンセルラーLPWAモジュール。各国・各地域の電波法に基づいており、世界の多くの地域において事業者提供のサービスにも対応します。  
Type ABZ(CMWX1ZZABZ)|LPWA製品

 

また、Type ABZモジュールを多数導入する前に動作や特性を確認するためのType ABZ評価キットが、STMicroelectronics社から販売されています。

今後、上記以外にも時代と利用者のニーズに対応する仕様や機能を持ったさまざまなLoRaWANモジュールを発売予定です。    
LoRa(LoRaWAN)モジュール|村田製作所(murata.com)

INDEX - LoRaWAN(ノンセルラーLPWA)入門 - 基礎からIoT活用事例まで(1)

1. LoRaWANとは

1.1 LoRaWAN(ノンセルラーLPWA)とセルラーLPWAの比較

1.2 LoRaWANの主な用途

2. LoRaWANの通信プロトコルスタック - LoRaとLoRaWANの役割 -

2.1 LoRa(物理層)とは

2.2 LoRaWAN(MAC層)とは

3. LoRaWANネットワークの構築

3.1 自作のLoRaWANネットワークの構築例

3.2 事業者を利用したLoRaWANネットワークの構築例

コラム - 通信プロトコルスタックとは

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