RFID製品

製品技術紹介
電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2017年5月25日号に掲載された内容を再構成したものです。
掲載誌:電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2017年5月25日号
株式会社村田製作所(以下ムラタ)は、玩具・アミューズメント市場向けにNFC搭載のスマートフォンや携帯型ゲーム機で読み取り可能なHF帯の小型RFIDタグ(マジックストラップ®)”LXTBシリーズ”を提供している(図1参照)。
RFIDとは無線を用いた自動認識技術で、ICタグを使いさまざまなモノを識別・管理するシステムのことを言う。HF帯RFIDは、13.56MHzの周波数帯を利用した電磁誘導方式であり、通信距離は10cm以内とUHF帯(860~960MHz)に比べると短くなるが、水の影響を受けないなどの特徴がある。一般的には電子マネーに代表される非接触ICカードで普及しており、決済や個人認証で使われていることが多い。最近では、スマートフォンや携帯型ゲーム機でも読み取りが可能なため、アミューズメント施設などのコンシューマ向けサービスでも利用が広がっている。
2010年頃から、玩具・アミューズメント市場において現実世界とゲーム内の世界を結びつけるデバイスとしてRFIDの活用がはじまり、現在では多くの事例が報告されている。そのほとんどは13.56MHz帯の近距離無線通信規格であるNFC(Near Field Communication)に準拠している。活用事例にはカードゲームのNFC ICカード化や、キャラクターのフィギュアの台座にRFIDタグインレイ(RFID ICをアンテナに接合したもの)を埋め込んだものがある。これらのカードやフィギュアをスマートフォン、家庭用ゲーム機やアーケードゲームのリーダで読み取ることで、ゲーム内のカードやフィギュアの情報と連動したキャラクターが登場し、成長したりする。また、ゲームのプレイ情報をRFIDタグのメモリに記録することで、NFCリーダライタが実装されているゲーム機やスマートフォンなど異なるメーカーのものでも利用することができる。
しかしながら、従来のNFCカードとタグではスマートフォンやゲーム機で読み取るためには一定の大きさが必要となるため、NFC機能を利用するにはカードや3~4cm角ほどの台座を用意する必要があった。RFIDタグをキャラクターフィギュアの中に埋め込みたいという市場の要求に応える製品はまだ実用化されていない。
ムラタは以前よりRFIDタグ(マジックストラップ®)の標準製品として3.2mm角のHF帯RFIDタグLXMS33HCNG-134, LXMS33HCNK-171を提供しているが、専用のリーダでは読み取れるものの、スマートフォンのリーダでは通信距離が短いなどの課題があった。
そこでムラタでは小型でフィギュアの中にも埋め込むことができ、NFC機能付きのスマートフォンで読み取り可能なHF帯RFIDタグ(マジックストラップ®)”LXTBシリーズ”とリーダライタを開発した(図2参照)。
HF帯RFIDタグ(マジックストラップ®)LXTBシリーズはアンテナコイル形成技術と高周波特性に優れた磁性体材料を組み合わせることにより、スマートフォンで通信可能な性能を保ちながらも従来のICカードの面積と比較して1/100のサイズまで小型化することに成功した。
HF帯小型RFIDタグ(マジックストラップ®):LXTBシリーズ
HF帯 RFIDリーダライタ:LXRFZZHAAAシリーズ(図3参照)
LXTBシリーズはフィギュアやキーホルダーなどの玩具向け埋め込み用途だけではなく、小型・堅牢・良好な通信特性という特徴を活かし、さまざまな分野で検討が進んでいる。
たとえば、ブランド品やアクセサリ分野ではRFIDの固有識別情報を記録しておくことで真贋判定に利用できるほか、スマートフォンをかざすことでコンテンツを表示するWebサイトへ誘導し、購入者へ情報を提供するツールとして活用することもできる。
図1、図3に示すLXTBシリーズ、LXRFZZHAAAシリーズはすでにサンプル出荷を開始しており、年内の量産を目指している。今後もさらなるラインアップ拡大に取り組み、ムラタのRFIDソリューション提供を通じてさまざまな領域で人々の楽しさや快適さの向上に貢献していく。