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脱炭素社会を加速させるデバイスの技術革新

EVや住宅・公共建築物への導入が進む蓄電デバイス

脱炭素社会の実現に向けて、各国政府がカーボンニュートラルなどの取り組みや制度構築を進める中、産業界では工業製品やシステムの省エネ・効率化を進めるため、デバイスの技術革新が加速しています。今回は、さまざまな業界・分野のおけるデバイスの動向をみてみましょう。

まず、電気自動車(EV)へのシフトなど、脱ガソリン車に向けた競争が激化している自動車分野において、省エネのカギを握るとされるのが電子デバイスです。EV用デバイスには省エネ化能力の向上に加え、高機能化による小型化や部品数削減などが求められ、電子デバイス製造で高い技術力を持つ異種企業の参入も活発化しています。

EVに搭載される蓄電デバイスは建築分野での活用も進んでいます。住宅・施設とEVを接続し、太陽光パネルで発電した電力をEVの蓄電デバイスに貯めるV2H(Vehicle to Home)は、再生可能エネルギーの効率的な使用手段として数年前から注目を集めています。政府は2021年に国や自治体が公共建築物を作る際、原則として太陽光発電設備を設置して脱炭素の取り組みを促進する方針を打ち出しており、蓄電デバイスの重要度はさらに増していくでしょう。

また、リチウムイオン電池(LiB)は、エネルギー密度を多少犠牲にして耐久性を高め、使用年数を延ばしてコストを下げるといった住宅ニーズ向けの改良も進むとみられています。それにともなって、富士経済の調べによると、EV、デバイスなどの小型民生用、電力貯蔵システム用などに使われるLiBの世界市場規模は、2020年見込みの4兆7410億円に対し、2024年には2倍の9兆5203億円に達すると予測されています。

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MEMSやGaN(窒化ガリウム)の技術革新がもたらすイノベーション

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)

MEMSの技術革新にも注目が集まっています。MEMSとは、シリコン基板などに微細加工技術を用いてミクロンレベルの構造体・電気電子回路を形成し、超小型センサ・アクチュエータを実現したデバイスのことです。情報通信、自動車、ロボットなどの多彩な分野において、小型化・高精度・省エネルギー性に優れたデバイスとして研究開発が行われています。

フランスの調査会社Yole Developpement社によると、MEMSの世界市場は新型コロナウイルスの影響によって2019・20年は低迷したものの、2021年には11%成長して134億ドルに達し、2026年までに182億ドルに増加すると予測しています。

GaN(窒化ガリウム)

デバイスへの技術要求が高度化する中、化学産業にも既存技術のブレークスルーとなる新素材が求められています。今後はLiB、全固体電池、太陽電池、燃料電池など、蓄電デバイス分野での新材料開発に対する期待が高まる中で、注目を集めているのが次世代半導体素材とされるGaN(窒化ガリウム)です。青色LEDの開発・製造に不可欠な材料として知られるGaNですが、社会実装はLED照明以外にも広がりつつあります。

名古屋大学未来エレクトロニクス集積研究センター(CIRFE)は2019年、GaNを使用した車載トラクションインバータを用いたEV「オールGaNビークル」を発表しました。同EVは従来のパワー半導体と比べ、電力喪失を65%削減。無駄な電力喪失を防ぐことでEVのさらなる省エネ化を果たしました。現在、CIRFEはGaN研究を中心課題とし、文部科学省、内閣府、環境省の3つのプロジェクトを通してカーボンニュートラルを支える技術開発を目指しています。

脱炭素社会実現のカギを握る、さまざまなデバイスの技術革新。これらは産業界に大きな影響を及ぼすと同時に、私たちの暮らしの中にも徐々に浸透しています。技術革新が進む一方、デバイスを使う私たちの意識や行動の変化もまた、脱炭素社会実現のもうひとつのカギだと言えるでしょう。

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