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AIの発展を支えるデジタル社会のインフラ、データセンタの役割

現代のデジタル社会では、個人や企業、行政などが利用するさまざまな端末・システムをクラウドと連携させて、社会全体でデータを共有・有効活用しています。豊かで持続可能な生活やビジネスの背景には、日常生活の中で目にすることのない大規模で高性能な情報処理インフラ「データセンタ」が存在します。データセンタは、今や社会を支える電力や通信と同等の重要な社会インフラとなりました。また、技術の進歩が最も著しい社会インフラでもあり、需要が拡大しているAIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の発展はデータセンタ抜きでは語れなくなっています。この記事では、データセンタの役割からそこで利用されているサーバなどの機器や要素技術について解説します。

私たちは、動画ストリーミングサービスやクラウドストレージなど、インターネット経由で提供される多様なサービスを日常的に活用しています。もはやそれらのサービスなしでは考えられないほど身近なものになりました。また、ビジネスや社会の活動においても、クラウドサービスの活用が必要不可欠になっています。日々の基幹業務で利用しているERP(Enterprise Resource Planning)システムやCRM(Customer Relationship Management)システム、意思決定・開発でのビッグデータ解析、近年では工場・プラントを管理するIoT(Internet of Things)システムなど、多様な用途でクラウド活用が仕事の中に根付いています。

クラウドでは、グローバル規模の莫大なデータを蓄積し、高度なAI処理など多種多様な情報処理を高速で実行することで、私たちが利用するさまざまなサービスを提供しています。こうしたデータの共有と情報処理を実行する役割を担っているのが「データセンタ」です。

「データセンタ」のイメージ画像
デジタル社会に欠かせないインフラとなった「データセンタ」

データセンタは、歴史的に見ればその名の通り、企業内で部門を超えて活用されるデータを保管・共有する場所として誕生しました。これが現在では、インターネットの発達に伴い、社会全体で共有されるデータの蓄積と高度な処理を効果的かつ効率的に実現するためのデジタル社会を支えるインフラへと進化しています。

この記事では、デジタル化が進む現代社会に欠かせない社会インフラとなったデータセンタの存在意義について解説します。また、そのさらなる進化に向けて解決すべき課題についても触れます。

社会全体でデータと情報処理機能を共有するからこそ実現できること

スマートフォンやPCといった情報機器で利用する便利なアプリやサービスは、その機器自体の機能・性能によってもたらされているかのように見えるかもしれません。もちろん、機器単独で利用できるものもあります。しかし、データセンタに接続し、個々の情報機器と連携させることで、機器単独では実現できないより価値の高いサービスを利用できるようになります。

たとえば、海外の取引先とリアルタイムでAI自動翻訳しながら会話することや、気分次第で膨大な曲目リストの中から流行の音楽を選んで聴くこと、生成AIを利用して思い通りのイラストを自動生成することは、データセンタの巨大なデータ蓄積能力と情報共有能力を社会全体で共有しているからこそできることだと言えます。

リモート会議、音楽配信、生成AIのイメージ画像
リモート会議、音楽配信、生成AIなどはデータセンタなしでは提供できないサービス

こうした付加価値の高いサービスを提供できる理由は、通信環境が整ってさえいれば機器そのものの機能・性能を問わず、データセンタが持つ巨大なデータ蓄積や情報処理の利用が可能になるからです。また、新しい機器に買い替えなくても常に最新の機能が利用できることや、必要に応じて柔軟に機能や性能を拡張できること、ITに関する専門的な知識がないと対処できないような高度なセキュリティ対策などを気軽に適用できることなども、データセンタを利用するメリットとして挙げられます。

さらに、現代社会のトレンドのひとつである「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、データセンタなしでは語ることはできせん。DXとは、デジタル技術を用いて社会のあり方を改善する取り組みです。世界には背景が異なる多様な人々が暮らしています。これまでは、住んでいる地域によって得られる情報と享受できる社会サービスに格差がありました。また、安価な端末しか購入できない人や、機械の扱いが苦手な人もいるでしょう。

DXでは、こうした多様な人々をあまねく取り残すことなく利便性を提供できることが重要になります。データセンタを利用したサービス提供により、情報とその処理機能を社会で共有することで、こうした格差を是正する効果があります。実際に忙しい人でも空いた時間に利用可能なネット行政サービスや、途上国の若者に未来を拓くクラウドでの教育サービスの提供など、多くの成果が上げられています。

とどまることのない高度化と大規模化で、低電力化が必須に

近未来には、データセンタの重要性はさらに高まり、より多くの機会でクラウドサービスが利用されることが予想されます。
とくに、AIの応用が拡大し、利用される技術が急速に高度化していることを背景に、データセンタの需要は飛躍的に増大しつつあります。生成AIや大規模言語モデル(LLM)などの技術が高度化し、AI関連処理に適した高性能GPU(Graphics Processing Unit)などを搭載するサーバの需要も高まっています。

さらに、自動車をはじめとする多くの機器や工場設備、社会インフラなどの機能をモデル化し、データセンタに置いたデジタルツインで管理することで、機能更新や保全を効果的に行う動きも加速しています。こうしたニーズに対応するため、より大規模なデータセンタを数多く設置する動きも活発化しています。

その一方で、データセンタの高度化や大規模化、増殖に伴う新たな課題も顕在化してきています。
まず、データセンタで消費する電力が増大の一途をたどっています。国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年時点での世界のデータセンタの総エネルギー消費量は約460テラワット時(TWh)であり、最も深刻なケースでは2026年にはその2倍以上に当たる1000TWhに達する可能性があるとされています(図1)。こうした急激な消費電力の増加に見合った発電所の建設は困難です。そのため、データセンタ側ではサーバや空調設備などの電力効率の向上が求められています。

データセンタの消費電力のグラフ
図1 2026年には、データセンタの消費電力が1000TWhに達する可能性も(出所:IEA、「Electricity 2024 Analysis and forecast to 2026」)

また、データセンタの中のサーバやケーブルなどで消費される莫大な電力は熱として発散されるため、新たな放熱技術の導入が必要になっています。一般に、サーバ内などで演算処理を実行する際の頭脳となる半導体チップは、動作環境を一定の温度範囲内に維持しないと正しく動作することができません。場合によっては、自らが発する熱で故障してしまう可能性もあります。このため、従来の空冷式の冷却システムに代わる、液冷式システムの導入など、さまざまな放熱対策が開発・導入されるようになりました。

今後、社会におけるデータセンタの役割はさらに高まることでしょう。より高度かつ高性能なデータ蓄積と情報処理機能を実現するため、また新たに顕在化してきた課題を解決するためには、ハードウェアとソフトウェアの両面で活発な技術開発が進められています。
豊かで持続可能な社会の実現は、こうしたデータセンタ向け技術のさらなる発展にかかっていると言えるでしょう。

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