汎用から専用へ、処理機能の多様化が進むこれからのデータセンタの姿のメイン画像

汎用から専用へ、処理機能の多様化が進むこれからのデータセンタの姿

生活やビジネス、社会活動の中で、データセンタを活用して処理すべき情報が急激に多様化しています。そして、データセンタでは活用用途の拡大に伴って、これまでにも増して多様なタスク(情報処理の作業)が実行されるようになりました。

データセンタ内で処理しているタスクには、それぞれ個別の特徴があります。一括りに語られがちなデータセンタでの情報処理ですが、実は、処理対象となるデータの量や質、処理の手順、精度・速度にはさまざまな違いがあるのです(図1)。

多様なタスクの処理が求められるデータセンタのイメージ図
図1 多様なタスクの処理が求められるデータセンタ

これまでのデータセンタに設置されてきた情報処理システムは、不特定多数ユーザーによる多種多様なタスクを、高速かつ効率的にこなすことを前提に設計されてきました。このため、高い汎用性と柔軟性を実現できるシステム仕様が採用されています。たとえば、データセンタの頭脳となるサーバのプロセッサには、最も汎用性が高いプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)を多用し、同じチップを多様なタスクの処理に適用していました。

ところが近年のデータセンタでは、様相が大きく変わってきています。タスクの特徴に応じて、異なるプロセッサを使い分けながら処理するシステムが構築されるようになりました。この記事では、応用領域の拡大や利用者・利用シーンの増大を背景とした、データセンタの基本的な設計思想の変化について解説します。

一般的情報処理はCPUで、AI関連処理はGPUやTPUなどで実行

現在のデータセンタでは、演算処理を実行する際の頭脳の役割を担うプロセッサとして、大きく5種類の半導体チップが使い分けられています。どのようなタスクが、いかなるチップで処理されているのかについて紹介します(図2)。

タスクの内容に応じて、5種類のチップを使い分けのイメージ図
図2 タスクの内容に応じて、5種類のチップを使い分け

まず、データセンタの利用形態として、これまで最も一般的だった情報処理であるビジネスでの日常的業務処理(顧客管理や商品の受発注処理など)に注目してみましょう。こうした処理では、膨大な件数のルーチンタスクを実行します。実行するタスクでは、お客様一人ひとりに応じた柔軟な対応が求められ、複雑な条件分岐や逐次処理を含んでいます。ですが、1件1件のタスクの負荷はそれほど大きくはありません。こうした処理をクラウド上に置いたシステムで実行する場合には、逐次処理を柔軟にこなすことに長けたCPUコアを大量に備えるマルチコア構成のプロセッサを活用し、同時並行的に処理します。このシステムでは、1件1件のタスクの間での関連性が薄い独立した膨大なタスクを迅速かつ高効率に処理できます。

その一方で、近年急激に需要が高まっている人工知能(AI)や機械学習に関連した処理では、異質な情報処理が求められています。これらのタスクでは、極めて膨大なデータセットを、あらかじめ用意しておいたニューラルネットワークに入力し、同じ演算処理を繰り返し実行するため、高負荷になります。演算処理そのものは比較的単純ですが、1件のタスク自体が巨大になることが特徴です。こうした処理をクラウド上で実行する際には、AI関連処理で多用する行列演算などに適したコアを数千個搭載するGPU(Graphics Processing Unit)を利用して実行することが一般的です。

近年では、AI関連処理を担うプロセッサが、さらに細分化される方向に進んでいます。AI関連処理の中でも、特に演算の仕様を明確に定めることができる学習済モデルを対象にした推論処理には、TPU(Tensor Processing Unit)などと呼ばれる特定のタスクに最適化した専用チップを適用する例が見られるようになりました。こうすることで、さらなる高速性や低消費電力、高コスト効率の処理を追求できるからです。ただし、より高度なAIを研究開発する段階では、さまざまなモデルやアルゴリズム、AIフレームワークを試す必要があります。このため、AIモデル自体の性能を高める学習処理では、高い汎用性と並列処理能力を兼ね備えるGPUがこれまで通り使用されています。

また、AI関連処理ではGPUなどとメモリーやストレージ間で従来タスク以上に高速・大容量のデータのやり取りが発生します。このため、より高帯域のネットワークの導入も求められてきます。一般に、AI関連処理に特化したサーバと汎用的に利用するサーバを混在させる例は少なく、AIデータセンタとして汎用的なデータセンタとは別に設置される傾向にあります。

ネットワーク処理には、機能を専用化したDPUやFPGAを適用

データセンタ内で処理するタスクの中には、いかなるアプリケーションにおいても共通して実行するタスクもあります。インターネット上を流れる膨大な通信データを制御するためのネットワーキングやパケット処理などの演算、ストレージの書き込み・読み出しなどの処理はその典型です。この他にも、データの暗号化や圧縮/伸長といったセキュリティ関連のタスクも実行されるようになりました。特に、SNSや動画配信などの処理では、こうしたタスクを膨大かつ迅速に実行する必要があります。

かつてこれらの処理はすべて、企業の顧客管理などの処理を実行しているCPUで行われていました。これが近年では、DPU(Data Processing Unit)と呼ばれるネットワーク処理などに特化したプロセッサを利用する例が増えてきました。DPUを利用することでCPUの負荷を軽減できます。これによって、高価なCPUを、CPUでなければ実行できない処理に振り向けることが可能になります。その結果、データセンタ全体のパフォーマンスは向上します。

DPUで処理するタスクの中で、ネットワーク処理は特にリアルタイム性が求められる処理となります。その一方で、定型フォーマットのデータを対象にした一定の処理を実行することが多いため、演算内容の的が絞りやすい傾向もあります。こうしたタスクの特徴から、プログラムを書き込むことで専用ハードウエアを実現できるFPGA(Field Programmable Gate Array)が広く利用されるようになりました。FPGAを利用すれば、処理を終えるたびに外部メモリーに処理対象となるデータを戻す必要がないため、極めて効率的な処理が可能になります。

最近のクラウドサービスでは、プロセッサの種類を使い分けるだけでなく、多様なCPUのアーキテクチャを用意するなど、選択可能なハードウエアがより細分化されていく傾向が見られます。さらに将来的には、量子ゲート方式や量子アニーリング方式などの多様な量子コンピュータを用いるなど、これからのデータセンタはさらに多様化が進む見込みです。

エッジコンピューティングを担うマイクロデータセンタ

さらに、少し違った切り口からのデータセンタの多様化も進み始めています。データセンタの新たな形態として、「マイクロデータセンタ(MDC)」と呼ばれる、小型のデータセンタを開発・設置する動きに注目が集まるようになりました(図3)。

エッジコンピューティングの導入で注目集まるマイクロデータセンタのイメージ図
図3 エッジコンピューティングの導入で注目集まるマイクロデータセンタ

MDCとは、冷蔵庫ほどの大きさを持つ小型データセンタです。サーバやネットワーキング、セキュリティのシステムに加え、無停電電源装置(UPS)も含めた電源や冷却のシステムなど、データセンタに求められるあらゆる機能を1つの標準ラック内に収めて完結させている点が特徴です。一般には単独で利用する場合は少なく、クラウド上の大規模データセンタのサテライトとして運用し、クラウドと連携して遠隔監視・管理しながら利用します。また基本的には、データを収集・活用する現場(エッジ側)に近い場所に設置して利用するため、壁掛け型や堅牢型、防音型など、さまざまな環境に適応可能な設計が求められる点もMDCの特徴だと言えます。

MDCの主な用途には、エッジコンピューティングが想定されています。工場や産業プラント、大規模商業施設などに設置したIoTデバイスやローカルネットワークに隣接設置することで、リアルタイム性の高いデータ処理を実現したり、医療施設や教育機関などに設置して秘匿性の高い情報の安全な保管と迅速なアクセスを提供したりするような用途での活用が構想されています。また、5Gの基地局と融合させて、低遅延サービスの実現やネットワーク効率の向上などに利用する動きもあります。

データセンタは、年々より多くの役割を担う方向へと進化しています。導入されるシステムの構成や仕様はより多様化していくことでしょう。

関連製品

関連記事