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消費電力の増大でグリーン化が必須に、持続可能なデータセンタの実現技術

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「GX(グリーントランスフォーメーション)」は、現代社会が取り組む2大トレンドであると言えます。これらを推し進めていくうえで、デジタル社会を支えるインフラであるデータセンタは、極めて大きな役割を担っています(図1)。

DXとGXを支える役割を担うデータセンタのイメージ図
図1 DXとGXを支える役割を担うデータセンタ

DXを実践する中で、生活やビジネスなどで扱う多様で膨大なデータを集約し、AI(人工知能)などを利用して課題解決に結びつく知見を抽出するためには、社会全体での巨大なストレージ能力と演算能力の共有・共用が欠かせません。また、GXの一環として、生活や生産活動、物流・交通、社会活動の中に潜むエネルギー消費のムダを発見・解消するためには、ヒトやモノの動き、装置・設備などの動きをキメ細かく管理・制御する必要があります。これらDXとGXの実践に不可欠な情報処理を一手に担うことになるのがデータセンタです。

DXとGXの実践に不可欠なデータセンタですが、解消しておくべきジレンマも抱えています。データセンタの能力向上と拠点増設が進むことで消費電力が急増し、その結果としてデータセンタ自体の持続が危うくなる可能性があるのです。この記事では、さらなる能力向上への大前提となる、データセンタでの消費電力を低減する技術、効果的な放熱技術の開発動向について解説します。

データセンタの消費電力増大は社会問題化している

データセンタでの消費電力の増大は、既に社会問題として顕在化してきています。世界的な統計データ会社が公表している調査結果によると、2024年3月時点で世界には9000拠点以上のデータセンタが存在するそうです。今後も着実に設置が進む見込みです。そしてデータセンタ自体の増加に伴って、総年間消費電力はほぼ4年ごとに倍増しています。もっとも多くデータセンタが設置されている米国では、データセンタの巨大化が進み、500MW規模の拠点が設置される例も出てきました。これは人口100万人の都市の電力需要に相当します。このことは、データセンタの設置と発電所の設置をセットで考える必要がある時代が到来していることを意味しています。

加えて、生成AIの学習処理のような、莫大な演算性能が求められるタスクの処理が増え、消費電力の増大傾向に拍車をかけています。生成AIの学習には、クラウドサービスで処理されている企業業務のワークロード(作業負荷)よりも10~20倍の電力を消費すると言われています。また、AI処理を実行しているサーバには最先端GPU(Graphics Processing Unit)が搭載される例が多く、その中にはチップ1個で年間3.7MWhを消費するものも登場しています。これは、一般家庭の1年半分の消費電力に相当する量です。

データセンタ内での消費電力の内訳と現状技術維持を想定した場合の将来の消費電力展望のグラフ
図2 データセンタ内での消費電力の内訳と現状技術維持を想定した場合の将来の消費電力展望(出所:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、「イノベーション政策立案のための提案書」)

高度な電気電子回路であるGPUなどで消費した莫大な電力は、消費した分だけ熱に変わります。そして、この熱は電気電子回路自体の安定稼働を妨げる弊害を生み出します。発熱による高温化を放置すると、半導体が正常動作しなくなる恐れがあります。このため、データセンタでは、強力な空調設備を導入してサーバを冷却しています。現在では、冷却用の空調設備自体で消費する電力の量が、データセンタ全体の30~50%を占めるまでになりました(図2)。現在のデータセンタでは、情報処理需要の増大に対応するためサーバの高密度配置が急激に進んでおり、それに伴い冷却効果が低下する傾向も見られています。こうした背景から、新技術の導入による、より高効率な冷却システムの実現が渇望されるようになりました。

液冷からAIによる温度管理まで、高度化する冷却システム

消費電力の増大と発熱量の増大を見据えて、新規設置されるデータセンタには、低消費電力化や放熱効率の向上に向けた多様なアプローチからの対策が導入されるようになりました。代表的な取り組みを紹介します(図3)。

データセンタでの低電力化と放熱対策のイメージ図
図3 データセンタでの低電力化と放熱対策

まず、データセンタ内の消費電力の中で大きな割合を占める冷却システムにフォーカスした効率化が活発に進められています。サーバでは、利用状況に応じて作業負荷が大きく変動する可能性があります。このため、それを冷却するシステムには、発熱量に応じて稼働を制御する仕組みの導入が必要です。常に冷やし続けるのではなく、必要な時だけ冷やすような制御を行うことで、消費電力を削減することができます。こうした制御を行う際には、温度センサなどを効果的に活用した精緻な動的温度管理が求められます。

また近年では、従来の空冷システムに加え、冷却効率が空冷よりも約30%高い液冷システムを組み合わせて利用する例も増えてきています。こうした複合型冷却システムでは、すべてを液冷にするのではなく、特に発熱量の大きな部分(ホットスポット)をセンサで検知して、そこを空冷システムの風量を調節しています。これによって、サーバを安定稼働させながら、消費電力を最小化させることを可能にしています。

少し違ったアプローチとして、データセンタ内に設置されている多数のサーバそれぞれ負荷を、冷却効率化の視点から分散させる試みも進められています。AIを活用して、処理の負荷が集中しそうなサーバや、局所的に高温になりそうなサーバを予測し、最小限の冷却で対処できるように事前に負荷分散させておく方法です。こうしたAIと空冷システムを組み合わせて、温度が過度に上がってしまう前に送風量を調整することで、最小限の冷却システムの稼働で対処できるようにする方法も実践されています。

さらに近年では、演算能力のさらなる向上による発熱量増大を見越して、サーバ自体を絶縁性と高い冷却効率を兼ね備えたフッ素系不活性液体やシリコンオイルなどに浸して利用する、液浸冷却システムを導入する試みも見られるようになりました。さらなる進展として、データセンタ自体を寒冷地に設置し、外気を利用した低電力での効率的な冷却を図る例も出てきています。研究開発のレベルでは、データセンタの設備を密閉し海中に設置することで冷却する技術の開発も進められています。

新半導体を導入して、サーバ電源システムの電力変換を高効率化

サーバの稼働に欠かせない電力を供給する電源システムの効率化を図る新技術の開発・導入も進められています。

データセンタ内の電源システムでは、電力変換を繰り返しているのイメージ図
図4 データセンタ内の電源システムでは、電力変換を繰り返している

一般的なデータセンタでは6600Vの交流電力を、大規模な拠点では特別高圧受電と呼ばれる2万2000Vの交流電力を電力系統から引き入れています。そして、何度も電力変換を繰り返して、サーバや空調など内部に設置した設備を稼働させています(図4)。例えば、サーバ上のCPU内のトランジスタは、最先端のチップでは1V未満という極めて低電圧の直流電力で動いています。引き込んだ高圧電力をトランジスタ駆動電力に変えるまでには、構内電力網、無停電電源(UPS)の内部、サーバラックの入口、サーバの基板上、そして半導体チップの内部で複数回の電力変換が行われます。そして、それぞれの変換過程で一定量の電力を損失し、この損失がムダな消費につながっています。

近年、こうした電源システム上の電力変換回路を構成するパワー半導体を、従来のシリコンベースのチップからシリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのより電力効率の高い新半導体材料をベースにしたチップに置き換える動きが活発化してきています。これら新材料ベースのパワー半導体を活用することによって、変換回路内部のスイッチング周波数が高まり、その分、小型のコンデンサやトランスなどを活用できるようになります。そうした高効率かつ小型化された電源の実現には、より小型で大電流対応可能な受動部品が求められるようになりました。

デバイスレベルでの低消費電力化

これまではデータセンタにおける消費電力の抑制手段は、冷却システムや電源システムでの対策が中心でした。その一方で、発熱源となるCPUやGPUなどのプロセッサやメモリーなどでの対策は、聖域化されて手付かずの状態でした。性能向上が最優先だったからです。ところが今後、AI関連処理のタスクの負荷が急激に増大していくことが予想される中、これらの半導体においても低消費電力化に向けた抜本的な対策が求められるようになってきました。

これからのデータセンタでは、AI関連処理での演算処理の需要が急増すると見込まれています。こうした処理では、プロセッサとメモリーの間でのデータ転送の頻度と容量が他のタスクに比べて際立って高いことが特徴となります。AI関連処理に伴う消費電力の削減を狙い、プロセッサとメモリーを3次元積層し両者をつなぐ配線の長さを短くする技術の導入も進められています。近年、大規模な最先端半導体向け実装技術として、「チップレット」と呼ばれる大規模チップをあえて複数個の小型チップ(チップレット)に個片化してパッケージ内で集積する技術に注目が集まっています。AI関連処理の低消費電力化を目指した3次元積層でも、このチップレット向けの技術が適用される見込みです。

さらに、プロセッサとメモリー間を、光通信技術でつなぐ試みも進められており、遠くない将来に実用化すると見られています。現在のサーバボード上では、データ伝送する媒体が電気信号であるため、配線抵抗や充放電による損失が発生し、消費電力が発生しています。ここを光通信に変えれば、データ転送を高速化しながら、転送時の消費電力を最小化することが可能になります。ただし、電気信号を光信号に変換する素子が新たに必要になるため、この部分での変換効率の向上や変換素子の実装などには新技術が求められます。現在、この領域での技術開発が活発に進められています。

データセンタでの処理能力の向上は、消費電力の削減や放熱対策の実践を抜きにして語ることができなくなりました。今後は、この領域での技術開発と革新的技術の導入が相次ぐことになると見られます。

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