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インダクタガイド

小型フィルムタイプRFインダクタの実装マニュアル

1. はじめに

電子回路では、信号を効率的に伝送するために、伝送路のインピーダンスをマッチングすることが重要です。
村田製作所では、高周波領域のインピーダンスマッチングに適したインダクタ(RFインダクタ)を開発・製造しています。
本記事では、小型フィルタイプのRFインダクタを対象に、実装時に発生しやすい傾きを抑制する因子について解説します。

当社では、材料、構造および工法により、幅広いインダクタをラインアップしています。
製品に関する詳しい情報を把握されたい場合は、インダクタの基礎知識ページを参照してください。

RFインダクタのラインアップ、Qのグラフ

2. フィルムタイプRFインダクタ

フィルムタイプのRFインダクタは、小型(<0603mm)かつ高周波で高いQを有し、高周波領域でのインピーダンスマッチングに適した製品の1つです。
フィルムタイプのRFインダクタは、スマートフォンを始めとする高密度実装が必要なアプリケーションで主に使用されております。今後は、使用されるアプリケーションの広がりが予想されます。

フィルムタイプのRFインダクタ、対象:0402・0603mmサイズ
ラインアップ一覧表

※表記は2025/4月時点のものです。最新情報につきましては、製品サイトをご参照ください。

フィルムタイプRFインダクタには、大まかに2つのタイプがあります。
High-Qタイプは高いQ特性を実現するために、様々な工夫が施されており、その1つが電極形状です。
L字電極は磁束が結合する外部電極の面積を小さくできるため、Q特性向上に効果がありますが、実装時に姿勢が傾きやすい実装条件には注意が必要です。
本記事では、L字電極品の実装における使いこなし方を解説し、お客様の工程において不具合なく当製品を使用していただくことを目的としています。
なお、本記事のチップサイズの対象は、0402mmおよび0603mmサイズになります。

フィルムタイプRFインダクタ標準品とHigh-Q品の比較

タイプ

標準

High-Q

標準品のイメージ画像

High-Q品のイメージ画像

Q

✔✔

外部電極

5面電極

L字電極

主磁束方向

垂直方向

水平方向

例として、0603mm小型フィルムタイプのRFインダクタのランド設計を示します。
High-Q製品のランド設計における許容幅が、標準品よりも小さい値となっていますので、ご注意ください。

影響因子標準High-Q
5面電極L字電極
マスク厚み(μm)100~150100
ランド幅(mm)0.20~0.300.25~0.30
ランド長さ(mm)0.80~0.900.90
ランドギャップ(mm)0.20~0.300.30
ランド設計のイメージ図

3. LQP03実装姿勢のポイント

LQP03 High-Q品の実装注意点について解説します。
不適切な実装条件を選択した場合には、以下のような実装不具合が発生する可能性があります。
実装姿勢におけるリスクとして、ランド幅と電極幅のミスマッチによる実装位置のシフトや、過剰なはんだ使用によるフラックスの表面張力による傾きが挙げられます。
特に、L字電極を採用したHigh-Q品では、不適切な実装条件を選択した場合、シフトや傾きに起因する隣接部品との接触や許容実装高さオーバーの不具合が発生する可能性が高まるため、注意が必要です。
今回の記事では、「傾き」に着目した課題とメカニズムに関して解説します。

実装姿勢におけるリスクのイメージ図

不適切な実装条件では、シフトや傾きに起因した、隣接部品との接触や許容実装高さオーバーの不具合が発生する可能性が高まります。

ランド設計のポイントを説明します。
はんだ量の適正化、および電極寸法と整合の取れたランド寸法設計に配慮していないランドを使用すると、High-Q品はL字電極のため、チップが傾きやすくなります。
そのため、High-Q品は、標準品よりもランド設計に対する許容幅が小さく、特にランド設計に注意が必要です。

ランド設計のポイント

  • はんだ量の適正化
  • 電極寸法と整合の取れたランド寸法設計

4. 傾き発生のメカニズム

傾きの発生過程を以下に示します。
傾きは、はんだ溶融前からはんだ溶融を経てフィレット形成する過程で発生します。

傾きの発生過程
傾きの発生過程のイメージ図

傾き発生のメカニズムについて説明します。
はんだ溶融時にSMD部品ははんだ上に浮いた状態になります。
5面電極では、その時に発生する浮力に対して、外部電極にはんだが濡れ上がる際にZ面方向への引張り力により、はんだ内に沈み込みます。
そのため、底面のはんだ量が少なくなり、姿勢が安定します。
一方で、L字電極品は5面電極に比べて外部電極のはんだ濡れ上がり面積が少ないため、沈み込む力が発生しにくく、はんだ液面で形成される力学的拮抗線に沿った安定点で傾きが固定化されてしまいます。

傾き発生のメカニズム
傾き発生のメカニズムのイメージ図

L字電極品は、はんだ溶融時に発生する外部電極へのはんだが濡れ上がる面積が小さいため、沈み込む力が発生しにくく、はんだ液面で形成される力学的拮抗線に沿った安定点で傾きが固定化されてしまいます。

5. 傾き抑制策

特性要因図を用いて、影響因子の一覧を示します。
傾きに対する影響度が高いと予想される因子を赤字で示しています。

SMD部品実装に関する特性要因図
SMD部品実装に関する特性要因図

続いて、前図で示した要因の中で、傾き抑制効果が得られる因子を示します。
はんだ印刷量およびランド設計により、傾きを抑制する効果が得られることがわかります。
こうした判断に至った評価結果について、以降で解説させていただきます。

L字電極品の傾きに対する影響実装因子
評価項目傾き抑制効果
はんだ粒径Poor
リフローピーク温度Poor
リフロー雰囲気Poor
①はんだ印刷量Good
ランド②ランド幅Good
③フィレット長さGood
④外部電極と重なりGood
①~④のイメージ図

①はんだ量(=印刷マスクの厚み)と傾きの相関を示します。
はんだ量が多いほど、傾きが大きくなる傾向があります。
このことから、はんだ量を適正にすることが重要であると言えます。
ただし、はんだ量は固着力とも相関があるため、少なすぎても新たな不具合が発生してしまいます。

マスク厚みと傾きの相関のイメージ図

傾きの大きさ:はんだ量が過剰>はんだ量が適正

②ランド幅と傾きの相関を示します。
ランド幅が大きいほど、傾きが大きくなる傾向があります。
よって、ランド幅を適正にすることも重要です。
ランド幅は電極幅と一致させることで、最も安定した実装性を確保できます。
また、ランド幅は、はんだ量とも相関があります。
固着力にも影響を与えるため、ランド幅を狭くしすぎると、はんだ量が少なくなり、新たな不具合が発生してしまいます。

ランド幅と傾きの相関のイメージ図

傾きの大きさ:ランド幅 大>ランド幅 小

③ランド長さ(=フィレット長さ)と傾きの相関を示します。
ランド長さが小さいほど、傾きが大きくなる傾向があります。
これは、ランド長さが小さいほど外部電極底面のはんだ量が多くなるためです。
よって、ランド長さを適正にすることも重要と言えます。

フィレット長さと傾きの相関のイメージ図

傾きの大きさ:フィレット長さ 小>フィレット長さ 大

④ランドと外部電極底面のオーバーラップ量と傾きの相関を示します。
オーバーラップ量が大きいほど、傾きが大きくなる傾向があります。
これは、はんだからの浮力が大きくなり、SMD部品の重心が上昇するため、外部電極底面のはんだ量が多くなるためです。
よって、オーバーラップ量を適正にすることも重要です。
オーバーラップ量ははんだ量とも相関があり、固着力にも影響を与えるため、小さくしすぎると、はんだ量が少なくなり、新たな不具合が発生してしまいます。

オーバーラップと傾きのイメージ図

傾きの大きさ:オーバーラップ 大>オーバーラップ 小

6. まとめ

本記事では、当社のフィルムタイプRFインダクタ、その中でもL字電極を有するHigh-Q品の実装時に発生しやすい傾きを抑制する因子について解説しました。
①はんだ印刷量、②ランド幅、③フィレット長さ、④外部電極とランドの重なりの影響が大きいことをご理解いただけたかと思います。
これまで説明させていただいた注意事項に配慮いただき、ランドを設計いただけると幸いです。

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