ノイズ対策部品/EMI除去フィルタ/ESD保護デバイス

ノイズ対策ガイド
自動車の電装化が加速する中、安全性を確保するためにノイズ対策の重要性がますます高まっています。
(株)村田製作所では、これまで一般用ノイズ対策部品で培った磁性材料技術・磁気回路設計技術に加え、独自の巻線技術を生かした車載用ノイズ対策部品を展開しています。
環境規制にともなう低燃費化、運転支援システムなどの進展により、車両1台あたりのECU (電子制御回路)の数は増加し車載ネットワークは高速化が求められています。
これらのECUに接続される車載LANのケーブルは妨害電波を発しやすく、また外来ノイズの影響を受けやすいことからノイズ対策が必須となっています。このような環境に対応するため、村田製作所ではノイズ抑制効果に優れた高信頼性のコモンモードチョークコイル (CMCC) の商品開発に取り組んでいます。
CMCCは、モードによる伝搬特性の差を利用し、ディファレンシャルモードで伝わる信号にほとんど影響を与えることなくコモンモードノイズのみを抑制する機能があります。この機能を最大限に引きだすためには、村田製作所の独自の設計技術や高度な巻線技術が欠かせません。
普通乗用車に加え、ロングトラックやバスへの搭載を考慮しなくてはならない車載Ethernetでは、伝送ケーブル長が15m程度まで想定する必要があります。
また車載カメラからの非圧縮画像伝送を意識した伝送速度の向上、伝送エラーによる再伝送頻度を極小化することによるレスポンス速度の向上などが求められ、規格化されています。
現在普及しているCMCCではリターンロス(Sdd11)、挿入損失(Sdd21)は規格限度値を満足するものの、バランス(Sds21)では満足せず伝送品位が悪化する可能性があります。
普及している民生Ethernet用CMCCでは、車載Ethernet伝送規格をクリアしない。
Ethernetに限らず、狭い空間に多数のECUや情報機器が詰め込まれる自動車内では、一般機器向け規格(CISPR22)よりはるかに厳しい自動車用ノイズ規格(CISPR25)が適用されます。特に放送波(AM、FM、TV)や通信機器(GPS、4G-LTE等)への電磁波影響が意識されています。
※測定条件が異なるため、単純比較はできませんが、限度値そのものも厳しい上、測定距離も自動車用ノイズ規格(CISPR25)が1mと、一般機器向け規格(CISPR22)の3mから短くなり厳しくなっています。この自動車用ノイズ規格を意識して、車載Ethernet用CMCC規格は、ノイズ除去特性(Scc21)の限度値を定めており、既に普及している民生Ethernet用CMCCでは満足できません。
伝送特性、ノイズ除去特性の両面から、より高性能な専用のCMCCを使用してEMC問題を解決する必要があります。
DLW43MHシリーズは、車載Ethernet規格で最も普及する可能性があるBroadR-Reach®に対応したCMCCです。村田製作所独自のフェライト材料技術により高挿入損失特性と高度な巻線技術により微小なモード変換特性を実現しました。
これにより車載Ethernet規格を満足した高いノイズ抑制効果と高イミュニティ性能を発揮します。
DLW43MHシリーズのスペック
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DLW43MHシリーズの定格表
Murata |
Common Mode |
Rated |
Withstanding |
Rated |
DC |
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DLW43MH201XK2L |
200uH (-25% +50%) |
20 | 50 | 110 | 4.5 |
DLW43MH201XK2K |
Operating Temperature : -40 to +105°C
DLW43MHを使用した具体的な回路例を示します。
LCフィルタと共に使用される場合もあります。
BroadR-Reach®は、故障診断システム (OBD: On-Board Diagnostics) 、車載カメラシステム、インフォテインメント機器から、それらを繋ぐゲートウェイ、更にはパワートレイン、セーフティ機器への展開により、自動運転に欠かせないネットワーク規格へと成長する可能性を秘めています。
車載Ethernet用CMCCは、小型化、高温対応化、高速伝送対応化、高信頼性化など、さまざまなノイズ対策ニーズに対応する商品開発を進め、その他の磁性部品のラインアップ充実にも努めていきます。
株式会社 村田製作所
EMI事業部 商品技術部 商品技術2課
柳生 規好
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