ノイズ対策部品/EMI除去フィルタ/ESD保護デバイス

ノイズ対策ガイド
近年、さまざまなセットにWLANが搭載されており、通信ネットワークを利用したサービスが増えてきております。ただそれらのサービスを快適に利用するには通信速度を十分に確保しなければなりません。IEEE802.11n、11ac など、WLANの通信速度は高速化されてきていますが、実はセット自身の受信感度が悪いとそれらの恩恵を受けることができません。
WLANの通信帯域と同じ周波数帯のノイズが機器内に存在すると、そのノイズがアンテナに結合し受信感度を劣化させることがあります。この現象を受信感度抑圧と呼んでいます。受信感度抑圧は機器内の狭い範囲で起きるため、輻射ノイズでは問題にならないような微弱なノイズでも影響を受けることがあり、従来よりも厳しいノイズ対策が求められます。
受信感度抑圧を改善するためには、WLANのアンテナに結合するノイズを低減する必要がありますが闇雲に対策しても効果が得られません。ノイズ源、伝導メカニズムの特定、最適なEMIフィルタの選定、伝導ルートを確実に断つための最適箇所への部品搭載がポイントとなります(図1)。
ノイズ源は、高速通信を行うインターフェース、メモリ、LSIとなります。
動作周波数が遅くてもその高調波ノイズがWLANの通信周波数に広帯域に重なることがありますのでご注意ください。
伝導メカニズムとしては、導体伝導、空間伝導、導体伝導→空間伝導、空間伝導→導体伝導などがあります。空間伝導であれば金属板や電波吸収シートによるシールド、導体伝導であればEMIフィルタが有効です。
EMIフィルタとしては、通信帯域である2.4GHz/5GHz帯において、大きなノイズ除去効果を有する高周波対応フェライトビーズ、コモンモードチョークコイル、π型/T型フィルタ、3端子コンデンサをお勧めします。
ノイズは一箇所押さえ込んでも他の伝導経路を伝って漏れてしまいますので、できるだけノイズを閉じ込めることを意識して対策を行いましょう。EMIフィルタはノイズ源に近いところに配置してください。
図2はBDレコーダーにおいてアンテナ結合ノイズを対策した例です。今回、SATAケーブル、USBケーブルから輻射したノイズがアンテナに結合しており、それぞれの信号ラインに図3-1・3-2のコモンモードチョークコイルを使用することにより、図4のように広帯域にわたって約3dBほどノイズが低減しました。
図3-1. インピーダンスカーブ(USBノイズ対策:DLW21SN900HQ2 )
図3-2. インピーダンスカーブ(SATAノイズ対策:DLP0QSA070HL2 )
EMIフィルタを入れることでアンテナに結合するノイズが低減したことが確認できれば、実際に受信感度が改善したかどうか確認してみましょう。
たとえば、リバブレーションチャンバー(リバブレーションチャンバーは3GPPが推奨している評価系の一つ)を用いればマルチパス環境を想定した受信感度評価が可能です。
図5の例では、受信感度、スループットともに約2dB改善しています。
受信感度が悪いときは、WLANアンテナへの結合ノイズがないか疑ってみてください。
ラインナップについてSATAはこちら、USB2.0はこちらをご参照ください。
担当 : 株式会社村田製作所 EMI事業部商品開発部
記事の内容は、記事公開日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。