ノートパソコンにおけるバッテリーラインのMLCC鳴き対策

1. はじめに

ノートパソコンの鳴きのイメージ画像

従来、電子機器に多くのタンタルコンデンサやアルミ電解コンデンサが使われていましたが、近年は製品の小型化や信頼性の問題などから、セラミックコンデンサへの置き換えが行われてきました。
電子機器の多機能化や静寂化にともない、ノートパソコンや、スマートフォン(携帯電話)、カーナビ、ワイヤレス充電などの電源回路において、従来目立たなかったセラミックコンデンサが原因の『鳴き(音)』が、大きな設計課題の一つになっています。

ノートパソコンでは、バッテリーラインで使われているセラミックコンデンサによる『鳴き(音)』が問題になることがあります。
スリープ状態/待受け画面など動作モードを変えると、ノートパソコン内部の動作が変わるため、動作モードによって『鳴き(音)』の大きさが変わり、聞こえ方も異なります。

本資料では、ノートパソコンのバッテリーラインのコンデンサによる『鳴き(音)』の対策・評価方法と、発生メカニズムをご紹介いたします。

ノートパソコンで『鳴き(音)』が発生しやすい動作モード

  • スリープモード(降圧コンバータ:PFMモード)
  • 液晶バックライト(昇圧コンバータ:PWM調光)
  • カメラモード/重負荷モード(間欠動作)

2. ノートパソコンで『鳴き(音)』の原因になりやすいコンデンサ

ノートパソコンでは、バッテリーライン(DC-DC converterの一次側)に、コンデンサが多く使われています。
このバッテリーラインにセラミックコンデンサを使いますと鳴きが発生する場合があります。

ノートパソコンの電源ライン簡略図(イメージ)
ノートパソコンの電源ライン簡略図(イメージ)
ノートパソコンの回路図(簡略)
ノートパソコンの回路図(簡略)

一般的に『鳴き(音)』が発生しやすいコンデンサ

  • コンデンサのサイズが大きい。
  • 静電容量が大きい。
  • ライン電圧、電圧変動(電流変動)が大きい。
  • 上記に該当するセラミックコンデンサが、同じラインに複数搭載している。

ノートパソコンのバッテリーラインのコンデンサが『鳴き』の原因になりやすい理由

  • バッテリーラインの電圧が10~20Vと高い。
  • CPU、カメラ、RFモジュールなどの各回路に電力を供給するため、電圧変動が起きやすい。
  • 部品サイズ/静電容量が大きいと、電圧印加による誘電体の膨張/収縮が大きくなる。

3. 鳴き対策の効果例

ノートパソコンで鳴きが発生しやすい動作モード/音圧レベルの高い動作モードである、スリープ状態/待受け画面についての鳴き対策効果例です。

バッテリーラインにセラミックコンデンサを使い鳴きが発生した場合

鳴きの原因になっているコンデンサに対し、鳴き対策を行うことで音圧レベルを低減する効果が得られます。

バッテリーラインのコンデンサのグラフ
バッテリーラインのコンデンサ

4. 鳴きの発生メカニズム

なぜセラミックコンデンサが原因で『鳴き(音)』が起きるのでしょうか?
鳴きの発生メカニズムと、当社で行っている鳴きの評価方法について、以下でご説明いたします。

鳴きの発生メカニズムのイメージ図1
鳴きの発生メカニズムのイメージ図2

積層セラミックコンデンサに用いる強誘電体は、必ず圧電性を有します。
電界をかけると歪みが発生し、チップが膨張・収縮するため、『鳴き(音)』が発生します。

鳴きの発生メカニズムのイメージ図3

5. 鳴きの評価方法

音圧レベル測定

『音』が問題になっていますので、「音圧レベル」が主な測定となります。

無響箱の中で、測定物を動作させた状態にして、マイクを介して、騒音計で音圧レベルを測定します。
また評価・対策のために、FFTアナライザで音圧レベルの周波数特性を確認しています。

音圧レベル測定のイメージ図

電圧変動測定

鳴きの原因になっているコンデンサを調査するために、「電圧変動」を測定します。

測定物を動作させた状態で、コンデンサに可聴領域周波数(20Hz~20kHz)のリップル電圧が印加されているか確認します。

電圧変動測定のイメージ図

音圧レベルと電圧変動の関係

コンデンサに印加された電圧変動のスペクトラムが、音圧レベルの周波数特性と同じ周波数で高くなっていると(赤点線枠内)、そのコンデンサが鳴きの発生原因と判断できます。

音圧レベルと電圧変動の関係のグラフ

6. ノートパソコンの鳴き対策置き換え事例―バッテリーライン―

動作モードによる音圧レベルの違い

ノートパソコンは、スリープ状態/待受け画面など動作モードを変えると、ノートパソコン内部の動作が変わるため、音圧レベル/電圧変動も変わります。
そのため、鳴きが発生している動作モードおよび鳴きが発生しやすい動作モードそれぞれで評価を行う必要があります。

動作モードによる音圧レベルの違いのグラフ

鳴き対策対象のバッテリーラインのコンデンサ(簡易的な回路図)

ピンク色枠で示しているのが、鳴きの原因になりやすいバッテリーラインのコンデンサで、鳴き対策の対象となります。

DC-DC converterで各回路に分岐する前は、同じ電源ラインにあるためほぼ同じ電圧変動をしています。
そのため、このバッテリーラインの全てのコンデンサに対して、鳴き対策を行う必要があります。

バッテリーラインの鳴き対策は、一部のコンデンサだけではなく、全てのコンデンサを鳴き対策製品に置き換えることで、より音圧レベルを低減することができます。

回路[A-C]の順に、通常のコンデンサから、鳴き対策製品に置き換えていきます。
鳴き対策製品に置き換える数量を増やしていくことで、音圧レベルは徐々に低減していきます。

鳴き対策対象のバッテリーラインのコンデンサ(簡易的な回路図)

置き換え評価データ

今回の評価で使用したコンデンサ製品

<対策前>
通常のMLCC GRM31MR61E106KA01

<対策後>
鳴き対策品 KRM31FR61E106KH01

スリープ状態

スリープ状態の置き換え評価データ

待受け画面

待受け画面の置き換え評価データ

7. 鳴き対策製品の紹介

鳴きの要因と対策

当社では、セラミックコンデンサによる影響で鳴きが問題になった場合、鳴きに影響を与える要因によって、鳴き対策製品の使用や部品配置などの提案を行い、鳴き問題の改善に対応をしています。

鳴きの要因と対策のイメージ図

鳴き対策シリーズ

フィレットを制御して振動を基板に伝えにくくする

KRMシリーズの製品画像

KRMシリーズ
金属端子タイプ積層セラミックコンデンサ

セラミックコンデンサを端子板などにより基板から浮かせて取付け、基板への振動の伝達を抑制する金属端子付きタイプ

ZR*シリーズの製品画像

ZR*シリーズ
インターポーザ基板付き低鳴きチップ積層セラミックコンデンサ

セラミックコンデンサをインターポーザ基板に実装することにより、コンデンサの振動の伝達を抑制するタイプ

鳴きにくい材料を使う

ECASシリーズの製品画像

ECASシリーズ
導電性高分子アルミ電解コンデンサ

セラミックコンデンサとは材料も構造も異なるためコンデンサによる歪量がないタイプ

製品比較の図1
製品比較の図2

8. まとめ

鳴きの発生メカニズム

鳴きの発生メカニズムのイメージ図

コンデンサによる鳴きは、コンデンサに電圧が印加され、電圧の振幅にともなって基板が振動し、振幅の周期が可聴領域の周波帯(20Hz~20kHz)となった時、『耳障りな音』として問題になります。

鳴きの評価方法

鳴きの評価方法のイメージ図

問題になっているのは『音』なので、音圧レベルの測定・評価を行い置き換え効果を確認します。
音圧レベルだけでは、鳴きの原因がコンデンサであるかは確認できません。
鳴きの発生メカニズムを確認するため、電圧変動の測定・評価が必要になります。
(必要に応じて、基板の変位量の測定・評価も行います。)

ノートパソコンで鳴きが発生しやすい動作モード

  • スリープモード(降圧コンバータ:PFMモード)
  • 液晶バックライト(昇圧コンバータ:PWM調光)
  • カメラモード/重負荷モード(間欠動作)

鳴きが発生しやすいコンデンサ

  • コンデンサのサイズが大きい。
  • 静電容量が大きい。
  • ライン電圧、電圧変動(電流変動)が大きい。
  • 上記に該当するセラミックコンデンサが、同じラインに複数搭載している。

ノートパソコンでは、バッテリーライン(DC-DC converterの一次側)にコンデンサが使われています。
このバッテリーラインは、一般的に電圧が高く、また消費電力の大きい回路に電力を供給するため、電圧変動が起きやすいので、鳴きが発生しやすい部分になります。

ノートパソコンの置き換え評価

動作モードを変えると、ノートパソコン内部の動作も変わり、音圧レベル/電圧変動/基板の変位量も変わるため、鳴きが発生しやすい動作モードそれぞれで評価を行う必要があります。
バッテリーライン(DC-DC converterの一次側)にセラミックコンデンサが複数使われている場合、バッテリーラインのコンデンサの一部を鳴き対策するのではなく、同じバッテリーライン全てのコンデンサを鳴き対策することで、音圧レベルをより低減することができます。

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