医療とテクノロジーの未来

第5回 進化する医療技術と医療の未来

ここまでに紹介したIoTやAI、5Gの事例は、医療での活用が期待されるテクノロジーの一部に過ぎません。第4次産業革命はこれらのテクノロジーに加え、VR/AR/MR(仮想現実/拡張現実/複合現実)やロボットなどの活用も期待されています。こうした技術開発には何が必要とされているのか、課題と共に見てみましょう。

執筆者:加藤浩晃(医師)

診療に従事しながら、手術器具や遠隔医療サービスを開発。2016年には厚生労働省に入省し、医政局室長補佐として法律制定や政策立案に従事。退官後は診察を行う傍ら、AI医療機器開発会社を共同創業するなど、医療領域全般の新規事業開発支援を行っている。「医療4.0」(日経BP社)など著書多数。

VR、MR、ロボットなどが組み合わさる医療の未来

映像コンテンツなどをリアルに擬似体験できる「VR(仮想現実)」は、認知症や統合失調症の中核症状を擬似的に体験できるコンテンツが開発され、医療教育における疾患体験などとして活用されている。さらに、実際の空間にコンテンツを再現できる「MR(複合現実)」では、CT画像をもとに臓器を空間に立体再現して、手術の計画や術中の医師間コミュニケーションをサポートするツールが開発されている。

同じく手術支援の領域で進歩しているのは「ロボット」の活用だ。例えば、内視鏡手術を行う執刀医の頭にジャイロセンサーを装着し、頭を動かすだけで内視鏡を操作できる支援ロボットが登場した。これまでは内視鏡を保持する役割は別の医師が担っていたが、この技術によって保持役の医師の手を空けることができるようになる。

介護分野でも、認知症患者の見守りとしてのAI搭載対話ロボットや、介助者が装着したり、ベッドが動いたりして移動介助をサポートするロボットがある。さらに、超音波で膀胱サイズを計測して必要なタイミングでトイレに誘導する排泄支援機器や、定刻通りに服薬したかを確認する服薬支援など、さまざまなロボットやデバイスが登場している。

このように、実際に活用されている医療機器やデバイスは、それぞれ役割が細分化されている。しかし、今後はIoT、AI、5Gなどのテクノロジーと組み合わさることによって、1台のロボットが複数の役割をこなし、必要に応じて医療機関とも連携を図れるようになることが期待される。そうすれば、ロボットによる医療支援もますます広がっていくのではないだろうか。

適切な「課題の洗い出し」こそ医療の課題

これまで見てきたように、医療分野は新しいテクノロジーを活用しながら、課題解決に向けて日々進歩している。その一方で、医療現場に従事していると、非効率なことや上手くいかないことに遭遇する場面が多々ある。忙しい医療現場では、それらに立ち止まっている時間がないため、課題の洗い出しや解決が行われにくい。そのため、課題が山積みにされたままだったり、共有や言語化すらもされていなかったりする。今後、求められていくのは、課題を適切に洗い出し、新しいモノやサービスを開発していくことにほかならない。

そのためには、医療関係者だけでなく、テクノロジーを有する企業や研究を行うアカデミア、ベンチャー企業などの協力が不可欠だ。それぞれの立場から一緒に医療の未来を考え、健康的な社会につながる取り組みを共創していきたい。

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