インダクタガイド

小型で大電流化が可能なメタルアロイ パワーインダクタの特長 [基礎編]

1. はじめに

近年における、携帯機器・家電・自動車・産業機器など全ての機器において、セットの小型化・多機能化・高性能化・省電力化がますます進化し続けており、搭載される電子部品においても、より小型/薄型化且つ高性能の要求が求められています。

その中でもセットの核となる電源回路においては、DC-DCコンバータICの高速スイッチング化に伴い、使われるインダクタの低インダクタンス化が進むと共に、より小型/薄型化・低直流抵抗・大電流対応・高信頼性が求められています。本記事では、これらの要求に対応可能であるメタルアロイパワーインダクタの特長について紹介します。

2. メタルアロイパワーインダクタの構造

メタルアロイパワーインダクタは、図1のように、使用する部材としては、『巻線・メタルアロイ材・電極』といった材料が主であり、巻線をメタルアロイ材で一体成型し電極を形成した非常にシンプルな構造となります。

村田製作所では、そのシンプルな構造の中で、独自の材料技術・巻線技術・成型技術を駆使しインダクタを商品化しています。

メタルアロイパワーインダクタの一覧はこちら   

図1. 構造(代表例)

3. メタルアロイパワーインダクタの特長

メタルアロイパワーインダクタは以下の様な特長を持ちます。

①大電流対応
②緩やかな磁気飽和特性
③周囲温度に依存しない温度特性
④低オーディブルノイズ(耳に聞こえる周波数範囲のノイズ)
⑤低放射ノイズ
⑥耐衝撃性

以降にこれら特長について、従来のフェライト品と比較しながら説明します。

特長①:大電流対応

一般的にパワーインダクタの直流重畳電流値の決め方は、インダクタンス値が30%ダウンする時の電流値ですが、図2のように、メタルアロイインダクタはフェライトインダクタより小さいにも関わらず、30%ダウンのポイントでフェライトに比べ伸びています。この事から、小型ながら大電流対応が可能なことがわかります。
この違いは、メタルアロイ材の方がフェライト材に比べ飽和磁束密度が大きく、それによって蓄積エネルギーが高いのが理由です。

特長②:緩やかな磁気飽和特性

同じく図2の直流重畳電流カーブからわかるように、フェライトはある一定の電流領域まではインダクタンス値を維持しますが、限界領域を超えると急激に落ち込む傾向があります。これに対し、メタルアロイは低電流時から高電流時まで緩やかにインダクタンス値が下がって行く磁気飽和特性が特長となります。
この事より電源回路にある大きな電流が流れてしまった時に、回路がシャットダウン、又は誤動作する危険性がメタルアロイの方が少ない事といえます。

図2

特長③:周囲温度に依存しない温度特性

メタルアロイで使用する磁性材の大きな特長として周囲温度による透磁率の変動が非常に小さい=直流重畳特性が周囲温度に依存せず安定していることがあげられます。

図3に同サイズ・同インダクタンス値のコイルに対し、周囲温度を変えた時の直流重畳特性を示します。ここからわかるように、メタルアロイでは周囲温度に依存せず、安定した直流重畳特性が得られています。

この事より、メタルアロイインダクタは、セットの小型化による搭載部品の高密度実装化による内部温度の高温化対応や高温時の回路安定性(高信頼性)に優れています。

図3

特長④:低オーディブルノイズ

コイルに大きな電流が流れる事によって、フェライト品では、磁性材の貼合わせ部に大きな磁場が集中し発生する磁歪現象(磁性体の磁化の強さを変化させるとひずみが現れる現象)や、巻線間に働く磁力線によって巻線が微振動し、コイル自体や、その振動が伝わった実装基板から『キーン音』(俗に言うコア鳴き)といった現象が発生することがあります。

メタルアロイは巻線コイルを微粒の磁性材で成型している為、磁場が集中する場所が存在せず、巻線自体の振動も成形されたコアで抑えているため、コア鳴きが発生にくいインダクタです。(図4)。

図4

特長⑤:低放射ノイズ

インダクタの物理特性として、電流が流れる事によって周囲に時間的に変化する磁束を発します。この磁束の漏れは、隣り合ったコイル同士が結合しインダクタンスが変動したり、周辺部品へ悪影響(誤動作)を及ぼしたりなど、悪影響を与えることがあるので極力小さい事が望まれます。

図5に同サイズに一定の電流を流した際、コイル上面・側面方向から発生している放射ノイズを実測した比較図を示します。メタルアロイでは上面・側面共に、磁束の漏れが小さい事が確認できます。

この違いは、磁性材間の隙間(GAP)の大きさの違いであり、メタルアロイは粒子と粒子の隙間が微寸の為、漏れが小さくなっています。

この事より、セットの小型化による搭載部品の高密度実装化などに適しており、またセット基板上の部品レイアウトの際、干渉を考慮する必要が無いため自由度が高いと言えます。

図5

特長⑥:耐衝撃性

スマートフォンを代表とするポータブル機器などは、実使用上乱暴に扱われることが多いため、搭載部品に耐衝撃性が求められます。

セットを誤って落としてしまった時など、セットの外装はもちろん内部基板への瞬発的機械ストレスは非常に強く、基板が大きくたわみます。基板がたわむ事によって搭載部品には曲げ応力が加わったりシールド板・筐体へ接触したりしますが、搭載部品はこれに耐える必要があります。

図6にある条件での自由落下試験による比較結果を示します。
メタルアロイは一体成型であることから、フェライトに比べ機械的ストレスがある一点へ集中することがないため、破損が起こりにくい事がわかります。

この結果より、特長⑤で説明した内容と同じように、実装位置を気にする必要がなく、部品のレイアウトの自由度が高い事が言えます。

図6

以上がメタルアロイパワーインダクタの主な特長の説明となります。

メタルアロイパワーインダクタの紹介ページはこちら

4. おわりに

今回、メタルアロイ商品の主な特長をメインに説明しました。
村田製作所は、このメタルアロイの商品ラインアップとして、全ての市場・セットに対応出来るよう、小型から大型のメタルアロイ品を用意しています。

『もっと電流が、でも部品スペースの制限が…』
『セットを小さくする為、周辺部品からの温度で内部の温度が高くなるよなぁ…』
『セットの設計が完了、いざセット試作したらコイル辺りから音が出て規定レベルを超えていて…』
『高密度化にする為、部品スペースに制限が…あと部品同士の干渉が…』
『セットを落としても、ある程度まで壊れない部品を…』

このような、設計前段階で想定される問題、トラブル発生、要望などに対して、村田製作所のメタルアロイ品を、ぜひ、おためしください。

メタルアロイが加わった電源系インダクタのラインアップはこちら

 

株式会社 村田製作所
EMI事業部 商品技術部 商品技術3課

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