ノイズ対策ガイド

Pick Up Products! PLT10HHによるAVNカーナビゲーションシステムのノイズ対策事例

前回は、PLT10HHを使って自動車に搭載されるモーターのノイズ対策事例を紹介しました。今回はこれに引き続いて、AVNカーナビゲーションシステムの電源部分にPLT10HHを使用した例を紹介します。
車載モーターのノイズ対策事例を紹介した前回の記事はこちら
PLT10HHについて紹介した前々回の記事はこちら

AVNカーナビゲーションシステムのノイズ対策

カーナビゲーションシステムは高機能なAVN統合 (Audio Video Navigation) タイプと安価なPND(Portable Navigation Device)タイプに分化してきていますが、AVNタイプは単なるAVN機能だけではなく、外部と通信を行って情報を収集したり、複数のカメラを使って自車周囲の安全を確かめたりと、多機能化が進んでいます。最近ではナビ画面上にリアルタイム画像を表示して、それに各種情報を重ねて表示する、かつてのSF映画で出てきたようなモデルまで登場しています。

この高機能化に伴い、内部の演算素子は高速・高機能化し、多くのノイズが発生する状況になっています。一方、自動車にはナビ以外にもデジタル機器が搭載され、これらで発生するノイズがナビゲーションシステムに流入することも問題になります。AVNナビゲーションではAMラジオの周波数からGPSや通信に使用する周波数まで幅広い周波数範囲の電波を受信するため、流入を防ぐ必要のある周波数も幅広い範囲となります。AVNナビゲーションシステムのほとんどは金属筺体を使用しているので、ノイズがセットから外部に直接飛び出したりセット内に直接飛び込んだりすることは少なく、その流出入経路として問題になりやすいのは電源ケーブルです。

図1 AVNナビゲーションシステムのノイズ環境

AVNナビゲーションにはノイズ発生源とノイズに弱い回路とが同居しているため、電源ケーブルを経由したノイズの流出入に注意する必要がある。

ナビゲーションシステムの電源ラインは当然ながら自動車のさまざまな電子装備の電源ラインとつながっているため、各種ECU(Electronic Control Unit)、モーターからのノイズが流入したり、逆にナビゲーションシステムから流出したノイズがこれらの機器に影響を与えたりします。このため、ナビゲーションシステムの電源ラインのノイズ対策が重要になってきます。

 

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PLT10HHによるカーナビゲーションシステムのノイズ対策例

ノイズ対策に必要とされる部品は、ナビゲーションシステムの多機能化によって電源ラインを流れる電流が10A程度まで増加しているため、大電流に対応しなければなりません。
PLT10HHシリーズは最大10Aの大電流に対応したSMDタイプのコモンモードチョークコイルで、電源ケーブルで問題になりやすい、コモンモードノイズの放射や流入を抑えるのに適しています。今回は、PLH10HH1026R0(定格6A)を電源接続用コネクタの部分に使用してセットから外部に放射するノイズを測定し、そのノイズ対策効果を調べました。

※PLT10HHの商品情報はこちら

図2 ノイズ評価回路

その結果、図3のように、広い周波数帯域にわたってノイズ対策効果が確認できました。今回の評価はカーナビゲーションシステムから外部へのノイズ放射を対策する評価ですが、コモンモードチョークコイルは外部からケーブルを通して流入してくるノイズに対しても同様に効果があるので、ナビゲーションシステムをノイズから守る用途にも有効となります。

図3 ノイズ対策効果

他の対策としては、ケーブルにリングコアを使用する対策もありますが、リングコアの場合は巻き数が増やせないため、低周波ノイズに十分な効果が得られない場合が多くなります。また、リングにケーブルを2回以上巻くと、隣り合った巻線の間に線間容量が発生し高周波ノイズがそこを通ってバイパスしてしまうため高周波特性が低下します。PLT10HHは高周波特性も考慮した巻線方法を採用しているため、低周波から高周波まで広い範囲でノイズ対策効果を得られます。

図4 リングコアにおける問題点

このように、PLT10HHは、車載モーターやカーナビゲーションシステムなど、自動車の中のさまざまなノイズ対策に最適なコモンモードチョークコイルですが、自動車用途に限らず、FA関連機器やアミューズメント機器など、大電流を使用し、広い範囲でノイズを除去する必要のあるアプリケーションに適したノイズ対策部品です。

 

担当:村田製作所 コンポーネント事業本部 販売推進企画部 三屋 康宏

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