省人化・省力化にとどまらない自律型警備ロボットのメリットに迫る

労働力不足を背景に開発が加速―― 省人化・省力化にとどまらない自律型警備ロボットのメリットに迫る

工場における組立や溶接、あるいは介護支援や清掃など、ロボットが担う役割は加速度的に拡がっています。ビジネスや暮らしを後押しする一方で、アメリカのとあるコンサルティング会社は「ロボットによって世界中の8億人が失業する」と警鐘を鳴らし、話題となりました。
果たして、それは現実に起こり得ることでしょうか? 警鐘とは反対に、世の中には「ビジネスニーズは確実に存在するのに、従事するための人手が足りない」業界も存在します。そうした業界にとって、ロボットは必要不可欠な課題解決の最善手。深刻な人手不足に陥る警備業界を例に、ロボット技術の活用方法を見てみましょう。

1. なぜ、警備業界にロボットが必要なのか?

2. 警備ロボットの性能とは?

3. 警備ロボットのメリットとは?

4. 警備ロボットの現在〜未来は?

1. なぜ、警備業界にロボットが必要なのか?

侵入者や火災・設備機器などの異常を見つけ、人や施設の安全を守る警備業界は今、深刻な人手不足に悩まされています。

東京ハローワークによれば、「保安」に関わる職種の有効求人倍率は17.63倍(2019年11月現在)。つまり、17人分のポストに対して、たった1人の警備員しかいない状況です。そのため、警備員1人あたりの業務量が増え、必要な業務も消化しきれないうえ、人件費も高騰。そんな状況を打破するために、警備ロボットに活路が見出されています。

付け加えるならば、超高齢社会による労働力不足が深刻化している日本において、これは警備業界に限った話ではありません。働き手が減少する未来を見据え、いち早く具体性のある打開策を見つけることは、企業にとって、そして日本社会にとって必要不可欠なことだと言えるでしょう。

警備員の負荷が増すことで、人の出入りを監視する立哨(りっしょう)警備など、高い集中力を要する業務への支障が危惧されています。

2. 警備ロボットの性能とは?

 

現在、オフィスビルや空港、ショッピングモールなどへの導入が始まっている警備ロボット。主流となっているのは、大人の平均身長ほどの高さで、ラグビーボールや三角コーンのような丸みを帯びた形状をしています。侵入者を警戒させるための存在感を示しつつも、子どもたちに威圧感を与えず、倒れても被害を軽減する突起物のないデザインが意識されています。

搭載された360°カメラや超音波センサ、人感センサなどで異常を検知すると映像や音声を記録し、警備会社に通報するという仕組み。ポイントは、警備の精緻化と業務効率化です。人の目では見落としがちな細かい異常を発見し、侵入者がいた場合は発見時に映像として記録を残すことができます。また、警備員は巡回警備をするごとに異常をチェックしたレポートを作成しますが、警備ロボットは随時データを蓄積・送信することが可能で、レポートを作成する時間を巡回警備にあてることができるのです。

そして、最大の特徴は“自律移動”。導入時に施設のマップ情報を読み込ませる必要はなく、施設内を巡回させることで、警備ロボット自体を用いてマップを作り上げることができるのです。マップを作り上げた後は、点検すべきポイントを指定するだけで自ら最適な経路を導き出し、巡回警備にあたります。さらに、自ら操作してエレベーターに乗り、フロア間を自律的に移動する技術も開発されています。

自律移動の技術は、元々は自動車の無人運転に用いられていたものです。2004〜2007年にアメリカで行われたロボットカーレースで、参加企業や大学が開発したシステムが基礎になっています。ソフトウェアと、それを支える電子部品の技術の進歩によって、警備ロボットの性能が飛躍的に向上したのです。

3. 警備ロボットのメリットとは?

警備ロボットが担う主な役割は、出入り口で人の流れを見張る「立哨(りっしょう)警備」、施設内の設備点検も兼ねた「巡回警備」、異常の有無をまとめる「レポート作成」の3つが挙げられます。

一見すると、「警備ロボットは単純な業務しかできないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、単純な業務こそ、警備ロボットの最大のメリットなのです。

警備員の業務は当然「人や施設の安全を守ること」ですが、非常事態が発生することはごくまれ。業務の大半を占めるのは、立哨警備・巡回警備やレポート作成といったルーティンワークです。また、立哨警備・巡回警備をしているからこそ侵入者の警戒を促し、非常事態の抑止につながっていると言えます。つまり、ルーティンワークに対応するからこそ、警備ロボットは省人化・省力化に貢献できるのです。

警備ロボットであれば、立哨警備の最中に集中力が途切れることも、疲れ果ててしまうこともなく、夜間の巡回警備も休みなく行うことができます。先に述べたように、設備機器の発熱など、人の目には見えない異常もサーモセンサで見つけることができ、写真・映像を含めた正確なレポートを作成することができます。

これらをすべて警備ロボットに任せてしまえば、警備員の人員も労力も飛躍的に減らすことができ、非常事態への対処に注力することができるようになります。

警備ロボットがすべてを判断するのではなく、バックヤードにはスタッフが待機。人間の判断力を維持しつつ、省人化・省力化を実現しています。

4. 警備ロボットの現在〜未来は?

 

各国が警備ロボットの開発を進める中で、先頭を走るのはアメリカや中国の企業です。アメリカでは、すでにさまざまな機種の警備ロボットがオフィスビルやショッピングモール、空港などに導入され、実績を積んでいます。日本でも、モビリティやロボット開発のスタートアップ企業が研究・開発を進め、実証実験や導入が進み始めています。

ご存じのように、日本の合計特殊出生率は下降の一途をたどり、今後も人口回復の見込みは立っていません。一方で、2020年以降もオフィスビルやショッピングモールなどの新規開発・開業が控えています。また、訪日観光客の増加に伴い、空港の警備体制が厳重化される可能性も高く、警備業界の人手不足はますます深刻化していきます。そんな中で、警備ロボットの省人化・省力化、あるいは従来の監視カメラでは拾いきれない精緻化へのニーズが増すことで、今後、多くの企業が警備ロボットの開発に参入するでしょう。開発競争が生まれることで、技術的な進歩や導入コストの低下も期待できます。

今はまだ、オフィスビルやショッピングモール、空港、工場といった大型施設だけを対象としている警備ロボットですが、施設ごとの細かいニーズにも応えられるようになれば、幼稚園や病院、あるいは公園や一般道など、活躍の場は広がります。また、世界中から多くの人が来日する2020年は、テロへの対策を含めた警備の必要性が急増しています。駅や街中に警備ロボットが存在する日常は、そう遠くない未来に訪れるかもしれません。

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