BLF03VK

5G通信では、現在活用されている「高速・大容量」のほかに、「低遅延・超高信頼性」や「多数同時接続」の機能も期待されており、ユースケースの更なる広がりが予想されます。Band n77~n79のSub-6新帯域はこれらの機能を実現するために非常に重要な帯域となりますが、特定の条件で通信速度障害が確認されています。本記事では、その問題点と対策について紹介します。
モバイルルーターやCPEなどの機器において、5G band n79で基地局との間の通信が行われているときにWi-Fi 5GHz帯でUEとの通信が行われると5Gの通信速度が劣化します。
機器内部でWi-Fi 5GHz信号が5G RF回路に侵入することで干渉問題が発生します。侵入経路としてはアンプの電源ラインやRF-ICのLO信号ライン(またはLO信号生成用電源ライン)が挙げられます。
干渉対策として、5G LNAやRF-ICに、ノイズ侵入を抑制するフィルタを挿入することが有効です。
LNAの電源ライン(Vcc)には電源ライン用フェライトビーズの挿入が必要です。Wi-Fi 5GHz帯信号を効果的に抑制するために、5Hz帯のノイズ除去に特化したフェライトビーズ、BLF03VKシリーズが有効です。
こちらはRF-IC側の対策です。外部からLO信号を供給する場合、LO信号に混入するWi-Fi 5GHz帯信号を除去する必要があります。5GHz以上を減衰させるLCローパスフィルタが必要です。
LO信号をRF-IC内部で生成する場合は、その電源がノイズ侵入経路になります。LNAの場合と同様、電源ラインに5GHz帯特化フェライトビーズの挿入が有効です。
5G通信のエラーレート増加はWi-Fiの5GHzの電波が同時に使用されることによって発生します。機器の内部でWi-Fiの5GHz信号がLNAの電源ラインやRFICの信号ラインを通して5G通信回路のRF回路に侵入します。
5G通信回路のLNAやRFICの侵入経路にノイズフィルタを挿入するのが効果的です。
以下の構成で5G通信のブロックエラーレートを測定しました。コミュニケーションテスタを5G基地局、Wi-Fiエンド端末として動作させることで、DUTが5G通信と同時にWi-Fi 5GHz通信を行う状況を作りました。
Wi-Fi 5GHzが動作すると、5G n79のBELRが悪化しました。Wi-Fiや5Gのチャンネルがいずれであっても問題は発生しています。
Wi-Fi 5GHz帯動作時に発生しているノイズを観測しました。Wi-Fiモジュールやアンテナから出たノイズが、端末内5G RF回路に結合している場合、そのスペクトルが確認できます。
Wi-Fi 5GHz帯信号以外にノイズは見られません。よって、アンテナに結合していないことが分かります。つまりは、Wi-Fi 5GHz信号が電源ラインなどの内部から侵入していることが分かります。
BLERを低下していたのが外部からの5GHz Wi-Fi信号だったのかを確認しました。
近くにWi-Fi機器を置いてもBLERは増加しませんでした。
【5Gエラーレート増加問題】
5G band n79エラーレートは5GHz bandのWi-Fiが動作すると増加します。
以上より、5G n79のBLER増加は自家中毒によるものであり、機器内のWi-Fi回路から漏洩したWi-Fi 5GHz信号が原因と見ることができます。5GHzのノイズに特化したノイズフィルタBLF03VKシリーズを利用することにより、ノイズ問題を解決することができます。