ノイズ対策ガイド

信号品位を損なわないノイズフィルタの性能 [直流重畳特性編]

1.はじめに

電子機器においては、ノイズ対策のためノイズフィルタが使用されますが、使用するノイズフィルタを選択するにあたっては、適切にノイズを除去するだけでなく、ノイズフィルタが機器の誤動作に繋がる信号品位の低下を引き起こさないよう注意する必要があります。

ここでは、ノイズ対策に使用する際に注意するべきフィルタの性能について紹介し、これらの性能を改善したノイズフィルタを紹介します。

2.ノイズフィルタで注意すべき性能

ノイズフィルタを使用する際は、使用する回路やノイズ対策周波数に応じて、ノイズ対策部品を使い分ける必要があります。たとえば、図1に電源ラインに使われるノイズ対策部品を大きく3つのカテゴリーに分けて示します。

① 直流重畳特性
② 低周波ノイズ除去性能
③ 大電流対応可否

今回は①の直流重畳特性について説明します。

図1. 電源ラインインピーダンス型用ノイズフィルタの分類例

① 直流重畳特性

通常ノイズフィルタのスペックシートに電気的特性データが添付されておりますが、いざ電子回路に挿入して使用すると、スペックシート通りの特性が得られないケースがあります。その理由のひとつはノイズフィルタがもつ電流依存性で、これによって想定していた性能が発揮されない場合があるためです。

ノイズフィルタを選定する際の1つの基準に、通電時の電気的特性(いわゆる直流重畳特性)が重要な指標になります。

インダクタタイプのノイズフィルタは直流通電時にインピーダンスカーブが大きく変化するため、部品選定の際にこうした特性も考慮に入れておく必要があります。(図2)

今回紹介するNFZ5BBWシリーズは、通電時の電気的特性変化が非常に小さい優れた直流重畳特性をもつ商品になります。

図2.直流通電時のノイズフィルタ電気的特性の例

3.NFZ5BBWシリーズ

NFZ5BBWシリーズの電気的特性を図3に示します。10MHz~300MHzにインピーダンスのピークがあるラインナップがあり、ノイズを除去したい周波数に応じた部品を選定することが可能です。

これらの特徴から、LED照明の放射ノイズ対策で実例があり、低周波(10MHz~300MHz)のノイズ対策(電源ライン)向けに使用されることを想定しています。

NFZ5BBWシリーズはこちら

 
 
図3.NFZ5BBWシリーズの電気的特性とスペック

NFZ5BBWシリーズ

さて、肝心の電流通電時の特性ですが、図4のようになります。NFZ5BBWシリーズに電流を重畳しても電気的特性はほとんど変化しません。そのため、定格電流近くまで電流を流してもスペックシートに記載のとおりのノイズ対策効果が期待できます。

図4. NFZ5BBWシリーズの電流依存性データ

4.まとめ

電源ラインにノイズフィルタを使用する際は、電流重畳時の性能変化に注意する必要があります。

今回紹介したNFZ5BBWシリーズは、直流重畳特性が優れたノイズ対策部品の1つです。

あまり電流が流れない場合は通常のノイズフィルタで構いませんが、場合によっては今回紹介したNFZ5BBWシリーズのように直流重畳特性の優れた部品を選択することが重要です。

今回はノイズ対策部品の直流重畳特性について説明をさせていただきましたが、別の機会に②低周波ノイズ除去性能、③大電流対応可否についても説明させていただきます。

 

株式会社 村田製作所
EMI事業部 商品技術部 商品技術3課
若竹 伸幸

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