無線通信における電波(帯域幅)の有効利用 - 多元接続 FDMA/TDMA/CDMA(2)
INDEX - 多元接続 FDMA/TDMA/CDMA(1)
1. 無線通信で電波を有効活用するための必須技術
2. 無線通信での複数データの伝送
3. 多元接続の仕組み -FDMA/TDMA/CDMA-
4. まとめ
INDEX - 多元接続 FDMA/TDMA/CDMA(2)
以下、多元接続 FDMA/TDMA/CDMA(1)補足になります。
<コラム>多重化の仕組み -FDM/TDM/CDM-
無線通信における多重化の手法には、いくつかの方式があり、なかでも以下が代表的です。
・周波数分割多重方式(FDM:Frequency Division Multiplexing)
・時分割多重方式(TDM:Time Division Multiplexing)
・符号分割多重方式(CDM:Code Division Multiplexing)
それぞれの仕組みの一般的なイメージを図7-1、7-2、7-3に示し、赤枠の伝送路に着目して解説します。
周波数分割多重(FDM)
周波数分割多重方式(FDM:Frequency Division Multiplexing)とは、複数のデータをそれぞれ異なる周波数帯域に割り当て、各周波数帯域をチャネル(Ch)として1つの伝送路で同時伝送する多重化技術です。
FDMの一般的なイメージを図7-1に示します。送信側で、複数データを割り当てた周波数帯域をチャネルとし、1つの伝送路で多重伝送します。受信側は、各チャネルの周波数帯域に選択できる端末で送信されたデータを受け取ることができます。
無線通信にFDMを採用した例として、国内地上波テレビ放送があげられます。伝送路は空間で1つですが、複数のテレビ局から周波数ごとに画像・音声データの乗った電波が送信されており、受信側は一意の周波数を選択することで所望のテレビ番組を見ることができます。このほか、アナログ放送ラジオもFDMが採用されています。
時分割多重(TDM)
時分割多重(FDM:Time Division Multiplexing)とは、複数のデータを時間的に分割してチャネルとして割り当て、同一の周波数を用いて1つの伝送路で伝送する多重化技術です。
TDMの一般的なイメージを図7-2に示します。送信側で、端末からの複数データを時間枠で分割しながらチャネル(Ch)に割り当て、1つの伝送路で多重伝送します。受信側は、送信側と同じタイミングで各チャネルへと分離することで複数の端末がそれぞれ送信されたデータを受け取ることができます。
無線通信にTDMを採用した例として、欧州や米国のテレビ放送があげられます。
符号分割多重(CDM)
符号分割多重化(CDM:Code Division Multiplexing)とは、端末ごとに異なる識別符号をデータとかけ合わせた同一周波数帯域の信号を加算し、その信号群を1つの伝送路で同時伝送する多重化技術です。
CDMの仕組みを図7-3に示します。データと、このデータの1bit分の時間幅より短く周期性のある識別符号をかけ合わせて(変調して)変調信号を生成*8。端末ごとの複数の変調信号をそのまま加算することで多重化し、その多重化信号を1つの伝送路で伝送します。受信側は、端末ごとに多重化信号に変調時に利用した識別符号をかけ合わせて(復調して)データを復元することで、送信されたデータを受け取ることができます。
無線通信ではCDMを採用した標準的なシステムの例はみられず、ほとんどは多元接続方式のCDMA(Code Division Multiple Access)として広く採用されています。
*8 この変調信号と伝送時の元データ(元信号)の周波数帯域幅を比べると、変調信号の方が広くなる。この特徴は、伝送路における外部から受けるノイズの妨害に強いなどの通信上のメリットになっている。
<コラム>スマートフォンの技術仕様に記載されているFDD-LTEとTD-LTEとは
スマートフォンや携帯電話の移動通信や固定電話の通話では、送受信は同時であり、1つのチャネルを使って双方向で音声のデータが伝送していることになります。そうすると双方向伝送も多重化技術の1つのように思えます。
ところで、スマートフォンなどの技術仕様に“FDD-LTE”やTD-LTE(通常TDD-LTEをTD-LTEと記す)と記載されていますが、このFDD(Frequency Division Duplex)とTDD( Time Division Duplex)*9が双方向伝送を意味しています。
一方、LTE(Long Term Evolution)は、第4世代移動通信システム(4G)の通信規格のことであり、これには多元接続 -4Gの場合はOFDMA- である意味も含みます。したがって“FDD-LTE”は双方向伝送と多元接続の方式を記載しているともいえます。
少々複雑ですが、双方向伝送は多重化とはみなさず、双方向伝送と多重化の応用である多元接続とは、このように別々に記述されるのが一般的です。
*9 FDDは周波数分割複信と呼ばれ、下り/ダウンロード(端末側でデータ受信)と、上り/アップロード(端末側でデータ送信)において、それぞれ別の周波数を割り当てることで双方向伝送を実現している(図8-1)。
また、TDDは時分割複信と呼ばれ、上り下りとも同じ周波数帯域を使用し、時間軸方向に音声データを分割し、音声データの送受信を短時間(通話の場合でミリ秒オーダー)で交互におこなうことで、双方向伝送を実現している(図8-2)。したがって、厳密にいうとTDDは同時送受信ではないが、通話の場合、受信音声に違和感をもつことはない。
なお、双方向伝送については無線通信の基礎知識 - 無線の仕組み(2)にて解説している。
INDEX - 多元接続 FDMA/TDMA/CDMA(1)
1. 無線通信で電波を有効活用するための必須技術
2. 無線通信での複数データの伝送
2.1 多重化 -1つ伝送路(空間)の有効活用-
2.2 多元接続 -混信なく複数ユーザ同士で無線通信を実現-
3. 多元接続の仕組み -FDMA/TDMA/CDMA-
3.1 周波数分割多元接続(FDMA)
3.2 時分割多元接続(TDMA)
3.3 符号分割多元接続(CDMA)
4. まとめ