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メタバースによって現実味を帯びるバーチャルオフィスとは?

アバターを用いてバーチャルオフィスで会議を行う未来へ

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機に、ICT(情報通信技術)を活用した時間や場所を選ばない働き方=テレワークが一気に定着しました。そうした中、従来の働き方を革新する動きはますます熱を帯びつつあります。今回は、その代表例である「バーチャルオフィス」を軸に、エレクトロニクス技術を応用した働き方の未来を見てみましょう。

バーチャルオフィスとは、従業員がオンライン上のバーチャル空間に再現したオフィスに集まり、会議や共同作業などを行うこと。2021年に大きな話題を呼んだメタバースもオンライン上のバーチャル空間を指し、そこには都市や建物など、さまざまな空間モデルが構築されています。無限に拡がるバーチャル空間の中で、オフィス利用に特化したものがバーチャルオフィスだと言えるでしょう。

バーチャルオフィスでは、バーチャル空間を現実のように体験できるVR(仮想現実)や、現実世界にバーチャル世界を重ね合わせるAR(拡張現実)といった技術が応用されています。

例えば、在宅中の従業員がVR機器を装着すると、バーチャル空間に再現された会議室が広がります。そこに自分の分身であるアバターで入り込み、目の前に上司や同僚がいるかのような感覚で打ち合わせを行うことができるのです。VR機器の向きやコントローラの動きは、アバターの動きに反映されます。会議の参加者同士が目線を合わせながら、身振り手振りを交えて会話できることがバーチャルオフィスのメリットだと言えるでしょう。

バーチャルオフィスを支える技術は日々進化しています。アメリカでは、遠隔地に存在する人やモノを3D映像によってリアルタイムで目の前に再現する技術の開発が進んでいます。また、センサやアクチュエータなどの進歩を背景に、振動や動きによって触覚を人工的に作り出し、疑似的に再現するハプティクス技術の進化にも期待が集まっています。遠隔地の人が姿かたちはそのままに3D映像で目の前に再現され、モノに触れる感覚も味わえる。そんなバーチャル空間が現実になる日はそう遠くありません。

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遠隔地のモノを3Dで再現する技術は、製造業や建築業などでも利用が期待されている

メタバースを背景にVR・ARの市場規模が拡大

バーチャルオフィスの延長線上にあるメタバースは、超越を意味する「メタ(meta)」と、宇宙や空間を意味する「ユニバース(universe)」を組み合わせた造語で、国内外のIT企業が相次いで参入を表明する再注目の技術です。

2022年1月、アメリカで開催された世界最大規模の技術見本市「CES」でも、メタバース関連の技術が注目を集めました。日本の企業も存在感を示し、総合電機メーカーのグループ会社が高精細な映像でバーチャル空間を体験できるVRゴーグルを発表。そのほかにも、自身を3D映像化して友人らと対話できるアプリケーションや、メタバース内で熱や冷たさを感じられる着脱可能な冷温機器も話題を呼びました。

メタバースに関連するVRやARの市場は、第5世代移動通信システム「5G」の普及を追い風に、スマートグラスやヘッドマウントディスプレイなどのAR・VR表示機器の開発・性能向上が進んでいます。

富士キメラ総研の市場調査結果によると、AR・VR表示機器の世界市場は2030年に2019年比44・8倍の16兆1711億円まで成長する見通しです。企業間取引(BtoB)や企業が他企業経由で消費者に提供する取引(BtoBtoC)向けAR・VRソリューションの国内市場も年々拡大し、2030年には同46・6倍の8380億円に達すると予測しています。AR・VR表示機器はスマートグラスやヘッドマウントディスプレイが牽引し、将来的には労働力不足を補うためにAR・VRを用いた研修やトレーニングが一般化すると目されています。

メタバースを背景に急速に進みつつある働き方革命。リアルなオフィスに社員が集まって仕事をするという従来のスタイルに変化が迫られる一方、「チーム状況を把握しづらい」「テレワーク中に孤立感や疎外感を感じる」「偶発的な雑談が減る」といった問題も顕在化しました。そうした中、リアルとバーチャルという2つの働き方を融合した「ハイブリッドワーク」も広がろうとしています。技術の進化を踏まえながら、新たな働き方を模索する動きはしばらく続きそうです。

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