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超スマート社会の実現を支える 〜時代の要請に応え続けるムラタ

デジタルを駆使して社会課題の解決と豊かさの追求を目指す超スマート社会が到来しつつあります。暮らしや仕事、社会活動の場に新たな価値をもたらすデジタルトランスフォーメーション(DX)や持続可能な世界の実現に不可欠な脱炭素・・・。これらメガトレンドを具現化するためには、社会のリアルな状態や動きを映すデータを基に、人工知能(AI)などを駆使して、効果的かつ効率的な状況判断と意思決定、機器や設備の制御を行う必要があります。そんな超スマート社会では、より高度な電子部品を、これまでにも増して大量に利用することになりそうです。時代の要請に応える電子部品を、求められるタイミングで、求められる量を、いかにして用意するかが超スマート社会実現のカギとなります。村田製作所 代表取締役社長の中島規巨に、超スマート社会の到来を見据えた村田製作所の役割、さらには持続可能な社会の実現に向けた貢献について聞きました。

超スマート社会のインフラ、センサネットワークの構築に貢献

――日本政府が掲げる「Society5.0」で目指すスマート社会の実現に向けて、村田製作所はどのような役割を担っていくのでしょうか。

Society5.0では、IoT(Internet of Things)によって人と人の間、さらにはあらゆるモノを結びつけ、様々な知識や情報を共有することで、豊かで無駄のない持続可能な超スマート社会の実現を目指しています。

暮らしや仕事、社会活動の中で生み出されるデータの量は増加の一途をたどっています。そして、データ活用のシーンはこれまで以上に多様化しています。こうした中、Society5.0を実現するためには、様々な場所から多様なデータを収集し、収集した膨大なデータを迅速かつ確実にやり取りする高度なセンサネットワークが必要不可欠になります。村田製作所の使命は、コアテクノロジーであるセンシング技術と堅牢な通信ネットワークを実現する技術の提供を通じて、次世代の社会インフラとなるセンサネットワークの構築を支えることだと考えています。

村田製作所は、時代の要請に応えるセンサネットワークの構築に必要な技術・製品の開発をリードし、需要に合った生産体制を整え、タイムリーかつ必要な量を確実に提供していきます。

5Gの利用拡大で、あらゆるモノの電子化が加速

――超スマート社会を見据えて、今後、どのような新しい技術・製品に注力していくのでしょうか。

エレクトロニクス産業での現状の市場の動きや技術のトレンドを俯瞰すれば、将来提供すべき技術や製品を先取りすることはそれほど難しいことではありません。

例えば、通信システムの分野では、2020年から第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスの本格的な提供が開始され、利用可能な地域が着実に広がりつつあります。「高速・大容量」「低遅延」「多数端末接続」を可能にする5Gを活用すれば、単にスマートフォンの機能・性能を向上させるだけでなく、社会活動のあらゆるシーンでのデータ活用をより高度に変えることができるようになります。

例えば、自動車に5Gを応用すれば、道路を走行中の車両間、さらには交通インフラとの間で情報共有が可能になり、安全かつ効率的な自律運転が実現します。また、医療分野では在宅医療や遠隔手術などが可能になります。村田製作所のような製造業の工場でも、より高度で多様な作業をこなす産業ロボットの活用や、装置・設備の故障の予兆を察知し未然に対処する予防保全の実践が進むことでしょう。

5Gは、社会にイノベーションを起こす起点となるインフラであり、社会のあらゆる場所に、様々な目的で置かれている機器・設備のスマート化を加速させます。これに伴って、電子的な機能の実現に欠かせないコンデンサやインダクタなどの電子部品の需要は、これまで以上に高まることが確実です。村田製作所では、これら機器部品の基盤となる電子部品を「EI(Electronics Infrastructure)商品」と呼んでいます。最新技術を投入したソリューションを継続的に提供し、あらゆるモノのスマート化を後押ししていきます。

6G向けデバイスの開発では、村田製作所の真価が問われる

――既に、次世代の無線通信インフラである6Gの開発に関する話題も聞こえてきています。村田製作所では、どのような取り組みをしていくのでしょうか。

6Gは、2030年の実用化を見据え世界中の研究機関で技術開発が始まっています。村田製作所も3GPPなど移動無線システムの規格化団体に参画し、6Gではどのような周波数帯を利用し、いかなる方式の通信システムが利用されることになるのか情報を集め、技術開発の方向性を定めるべく動き始めています。

5Gでは、28GHz以上のミリ波を利用する技術が導入され、アンテナやフィルタ、増幅器、スイッチなど通信回路を構成するデバイスの実現に、それまで以上に難易度の高い技術が求められました。6Gでは、さらに周波数がひと桁高いテラヘルツ波を利用する可能性が高まっています。対応する通信回路で使用するデバイスの実現には、5G以上に難易度の高い技術が求められそうです。

村田製作所では、高性能・高品質な6G時代のデバイスを実現するためには、材料開発からスタートする必要があると考えています。材料開発には、相応の長い時間が必要になりますから、早い段階からキッチリと準備を整えておく必要があります。材料、生産工程、デバイスの各技術要素を密に擦り合わせて開発できる点は、他社にはない私たちの強みでもあります。6G時代のデバイス開発は、まさに村田製作所の腕の見せどころです。

「エコプロダクツ」「蓄電池」「RE100」で脱炭素に貢献

――持続可能な社会の実現を目指して、世界中の国や地域がSDGsの達成に向けて取り組んでいます。特に、脱炭素に関連する取り組みは、2020年以降、政府による具体的政策の実施や企業による関連ビジネスの活発化が顕在化し、動きが加速しています。村田製作所の取り組みについてお聞かせください。

村田製作所は、脱炭素に向けて3つの側面から貢献できると考えています。

まず1つ目は、部品の小型化を極め、電子機器を構成する電子部品での電力損失を削減することで、社会で消費する電力量や生み出される廃棄物量の削減に貢献します。こうした環境負荷低減に貢献する製品を、私たちは「エコプロダクツ」と呼んでいます。

次に2つ目は、太陽光パネルで発電した電力を蓄積して使い勝手のよい電源として利用できるようにする「蓄電池」ビジネスに注力。脱炭素社会への直接的貢献をしていきます。私たちが手掛ける蓄電池製品は、単に大容量化だけを追求するのでなく、耐久性の向上も同時に実現することを重視したものです。電気・電子機器の中に組み込むことで、稼働状況に合わせて頻繁に充放電を繰り返し、システムの電力効率の向上や再生可能エネルギーの有効活用に貢献します。

そして3つ目は、私たちの事業活動自体の省エネルギー化、あるいは再生可能エネルギーの活用を推し進めることによる貢献です。既に15カ所の生産拠点で太陽光発電を活用しており、生産活動に必要な電力の一部を賄っています。また、脱炭素への取り組みを一層加速するため、2020年12月に、自然エネルギー100%での事業活動の実現を目指す国際ビジネスイニシアティブ「RE100」に加盟しました。2021年9月からは、福井県の金津村田製作所で、最終的に工場内で消費する電力を100%再生可能エネルギーにしていくことを目指した取り組みをスタートしました。工場内の駐車場や建屋の屋根に太陽光パネルを敷き詰め、そこに村田製作所の蓄電システムを導入して活用しRE100の実現を目指します。

パートナーとの協業で、価値あるシステム・ソリューションを創出

――村田製作所では、スタートアップ企業との協業を推し進めて、新たなビジネスの創出に取り組んでいると聞きました。協業の意義についてお聞かせください。

村田製作所では、材料から生産設備まで自社開発しています。このため、自給自足による技術開発や生産体制の整備にこだわる会社というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、創業時にまで遡れば、京都大学の田中哲郎助教授と共同で現在の主力製品であるセラミックコンデンサの基礎となる誘電体材料、チタン酸バリウムの磁器素体の開発に成功したことが現在の飛躍の原点となっています。その後も、継続的に産学協同開発に積極的に取り組み、成長の原動力としてきました。協業によって生まれ、協業によって育った会社だと言えるかもしれません。

ただし、将来のビジネスを見据えれば、これまでとは質が異なる協業が求められていると感じています。この先5年間、10年間で、お客様の価値創出のモデルと、村田製作所に求める役割が大きく変わっていくことでしょう。これまで私たちは、コンデンサやフィルタなど優れた電子部品の提供に徹し、お客様である機器メーカにスマートフォンやパソコンなど価値ある応用機器を組み上げてもらっていました。ところが今後は、機器のハードウェア全体、もしくは機器の機能そのものを実現するソリューションの提供が求められます。ソフトウェア技術に強みを持つ企業や、私たちが提供するシステム・ソリューションを基に革新的サービスを生み出したいと考える企業が、お客様として増えてくるからです。

私たちは、商品の性質を見極めながら適切な経営を考える、ポートフォリオ経営を実践しています。コンデンサやインダクタなど標準品からなる1層目、カスタム仕様の製品である高周波部品やセンサなど2層目といった従来製品群のポートフォリオに加え、2020年以降には3層目としてハードウェアにソフトウェアを統合したシステム・ソリューションを新たに定義し、その育成に取り組んでいます。ただし、この3層目の商品を構成するすべての技術を自前でカバーすることは困難です。専門性の高い技術を保有するパートナー、あるいはユニークな技術を保有するパートナーを的確に見つけて、共に商品開発に取り組むことが不可欠になります。こうしたパートナーの候補は、私たちに土地勘のない専門分野にいるため、発掘は簡単ではありません。現在、村田製作所では、国内外でハッカソンやピッチイベントなどを開催して、新しいパートナーの発掘に努めています。さらに、スタートアップ、研究機関、大学の情報をキャッチして、パートナーを発掘する技術の目利き力を持つ人材の育成が急務です

来たるべき未来を見据えて、着実に準備を進める

――5年後、10年後、さらには未来の社会を持続可能で豊かなものにしていくため、村田製作所が貢献すべきことは多くなりそうです。

村田製作所に求められることは何なのか。しっかりと見極め、将来に向けた備えを少しずつ整えていきます。未来を見据えた準備ができている企業だけが、新しい社会の中で、大きな強みを持ち、期待に応える貢献ができると肝に銘じて取り組んでいきます。

【インタビュー動画】超スマート社会へ向けた村田製作所の取り組み

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